人里の貸本屋
「友人の小鈴は、貸本屋の子なんです」
「貸本屋、ですか」
「外界の本が結構あるので、勉強になるんですよ」
「なるほど…」
ふむ、僕のこれからにも役立つだろうか?
出来れば、武器のイメージがしやすい本があると嬉しいんだけど。
「ここですよ」
「…鈴奈庵、ですか」
「小鈴、入りますよ」
中に入ると、確かに本がたくさん置いてあり…外装は紫様の持っていた古い本とは少し違った。これが外界の本…ってことか。
「あ、阿求さん。もう読み終わったんですか?」
「ええ。小鈴がお勧めしてくれた本…とても面白かったです」
「あれ、後ろの方は…」
「ああ、どうも。八雲黄です。最近来たばかりで…」
「そうでしたか。…って、八雲!?」
「やっぱり驚きますよねー…」
八雲姓についての説明を簡単に。
「へー…」
「僕もここを使ってもいいですか?」
「はい、大歓迎ですよ!」
ん、よかった。…とりあえず聞いてみようか。
「武器の図鑑、みたいなものがあると嬉しいんですけど」
「武器の図鑑、ですかー…珍しいですね」
「ふふ、彼の武器はいろいろと変形させることができるみたいなので…参考にするんですね」
「そんなところです」
「わかりました、ちょっと待っててくださいね。…確か上の方に…」
どこからか、台を取り出してその上につま先立ちになって本を探している。
…なんだか、可愛らしいなぁ。
「えっと、こんなのはどうでしょう」
「『近接武器図鑑』…またピッタリなものが…」
「えっと…どのくらいの期間借りますか?」
「…あ、そっか。貸本屋だからお金が必要か…」
「ええ、まぁ…」
「…一旦保留にしますね。お金が工面できたらまた…」
「はい、じゃあこの本は他の人が借りないようにしておきますね」
「助かります」
背が低くて可愛らしいけど、しっかりしてるなぁ。
「では、私は続きを借りますね」
「はい、どうぞ」
「では、お仕事がんばってくださいね」
「阿求さんもがんばってくださいねー」
「では、また」
阿求さんと一緒に鈴奈庵を出る。…場所もちゃんと覚えたし、また来よう。
「では、私は戻りますけど…黄さんはどうします?」
「阿求さんを屋敷まで送って…慧音さんの所に向かってみます」
「そうですか。…そろそろ授業も終わる頃だと思うので、ちょうどいいかと思います。でも、別に送っていただかなくても…」
「…いや、結構な荷物ですから。なんなら持ちますよ」
「ふふ、じゃあ…お願いしますね」
いろんな人と親しくしておくのは大切だろうから…なるべく手伝える事はやっておきたいね。




