照れ顔と呆れ顔
目が覚めると、眼前には紫色が広がっていた。
「…むぐ?」
身体が全く動かない…何かに締め付けられているみたいだ。
…自分のものではない呼吸の音が聞こえてくる。
「…すぅ……ん…」
「…むぐぅ」
この雰囲気…たぶん紫様だ。
どうやら紫様の抱き枕にされてしまっているらしい。
…って、本当に全く動けない、どれだけ強く抱きしめてるんだ…
「んー…黄…」
「っ、く…うぅ」
更に強く、抱きしめてきて…いろいろ柔らかいものが当たっている。
「紫様、起きてください」
「んー…あと五分…」
「さっきからずっとそれじゃないですか…ん?」
「…むぐー」
「黄はもう起きてたのか、おはよう」
「んー…」
「…紫様、黄が窒息しそうになってますから」
「…昨日からずっとこうしてるから大丈夫よ…」
宴会で潰れてしまって…運ばれてからずっと抱き枕にされてたのか。
「…今晩から私の尻尾には触らせませんからね」
「ん、起きたわ」
すぐに投げ出された。…まぁ、藍様の尻尾の方がずっと気持ちいいだろうしなぁ。
「まったく…黄、体の調子はどうだ?」
「…関節がいろいろと痛いです」
「あら、なんでかしら」
「紫様のせいです…ってて…」
「ゆっくり伸ばしてからこっちに来なさい…」
「私の時と随分態度が違うわね」
「黄は言わば被害者なんですから…わざわざずっと抱きしめてなくても」
「それは…その…別にいいでしょ?」
…なぜ赤面してるんですか。こっちまで恥ずかしくなるじゃないですか。
「黄だって、安心できたでしょ?私がそばに居たから」
「…は、はい」
「ね?」
「….はぁ、もういいです。ご飯食べますよ」
藍様が完全に呆れ顔だ…。




