閑話 お年玉のような何か
「…歩きにくい…」
「クーは着物は嫌か?」
「…ううん、可愛いから好き、でも…」
「…ま、ここならすぐ動かなきゃならないってことにもならないはずだからね」
「…黄、早くしましょうよ…寒いから、早く帰ってこたつに入りたい…」
「…紫様も辛抱してくださいな」
外界のとある神社で、僕たちは初詣に来ていた。
…おかしいとは思うかもしれないが、幻想郷では既に博麗神社で済ませてある(というか、その後すぐ宴会になった)
「初詣終わったらクーに何か買ってあげるんですから」
「…ふふ、藍にそっくりね。式神を可愛がるあたりは」
「紫様だってそうでしょうに…」
「…そうだったわね」
結局、僕たちの主従関係は似たようなものになるらしい。特にダメな方で。
「藍と橙で留守番させてるけど…お土産、何がいいかしらねぇ…」
「うーん…藍様と橙で色違いの同じものを渡すのはどうでしょう。喜ぶと思います」
「いいわね…うん、そうしましょうか」
「…御賽銭箱の前に着いたよ」
「っと、じゃあ…」
お賽銭を入れて、今年一年の願いを込める。
…ちなみに、幻想郷でお参りした際に紫様がふざけて「今入れたお賽銭が今年のお年玉よ」と言ったら霊夢がブチ切れて数分で紫様がボロ雑巾のようにされてたっけ。「毎年やってるはずなのになんで毎回引っかかるのかしら」と言っていた紫様も身体を張りすぎだと思う。
「さて、と。じゃあ行きましょうか」
◆
初詣、と言っても既に外界では三が日を過ぎているので店に行ったりなどは問題なかった。
「ある…兄さん、本当にいいの、これ?」
「うん、クーがそれを気に入ったんでしょ?」
クーが選んできたのは可愛らしい白の鞄だった。よく見ると、デフォルメされた狼のような絵が入っている。よくこんなの見つけたなぁ…
「…ん、紫お姉ちゃんは?」
「藍さんと橙ちゃんに買うお土産をまだ考えてるみたい。お金払ったら紫さんの所に行こうか」
「うん」
外界で違和感が出ないように、呼び方は変えている。
クーは僕を兄とし、紫様や藍様をお姉ちゃんと呼ぶ…というか紫様が呼ばせていた。その度に悶絶してて可愛かったなぁ。
「…ん、もう決まったの?」
「ええ。…まだ決まらないんですか?」
「私ももう決まったわ、ほら」
「藍色と橙色の手袋ですか、いいですね…ふふ」
さて、買い物も終わったし…幻想郷に戻るとするかな。ちゃんと、僕の買い物も終わっているし。
◆
「紫様、わざわざありがとうございます…!」
「えへへー…模様が藍様とお揃いだ!」
「ふふ、今度買い物に一緒に行く時につけていこうか」
「はい、藍様!」
「ふふ、喜んで貰えて良かったわ」
うん、実に微笑ましいな…っと、そうだった。
「紫様、これを」
「…あら?これ…」
「わぁ!紫様もお揃い!」
「…もう、買ってたの?」
「ふふ、三人お揃いなのがいいかなと思ったので」
同じ柄の、紫色の手袋は紫様によく似合っていた。…良かった。




