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東方黄明譚  作者: k.Yakumo
28章 主のいない異変
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輝針城:飛び回る刀、打ち上げられる姫様

「よっこいせっ!…ふぅ、刀がひとりでに動くなんてなぁ…やっぱり異変の影響か」


妖夢が持ち歩いている二振りの刀を何とか押さえて、動かないように柱にくくりつけておく。

どうも、あの城が出現したあたりで動き出したそうだ。


「幽々子さんは無事だけど…妖夢は?」

「まだ幽々子様にすがって半べそだよ…」

「…幽霊の仕業かなんかだと思ったんだろうなぁ。しかし…自分も半分幽霊なのに…」


藍様が僕を呼んだ理由は、単に収拾がつかない状態になっていたからだった。

ある部屋では刀が縦横無尽に飛び、片やその刀の持ち主は酷い錯乱状態になっていて使い物にならず。…うん、僕でもすぐ精霊を呼び出すほどには辛いな。


「とりあえず何とかなったけど…妖夢は今回は動けそうにないですね」

「仕方ないわね〜…ほら、妖夢。とりあえずは大丈夫だから」

「ほ、本当ですかぁ…?」


妖夢は幽々子さんに抱きついたままはなれようとしない。…ポジションがだいぶ羨ましい場所に…


「…異変が解決したら私と紫様でやってあげるから」

「俄然やる気が出てきました」

「男の子ねぇ、ふふ」

「…とりあえず、各地を見回った方がいいかな。紅魔館とか…古い道具とかが飛び回る事態になってたら大変だろうなぁ」

「…主様、私も手伝う」

「ん、頼むよ。…クーは竹林の方をお願い」

「…はい」

「じゃあ藍様、行ってきます」

「ああ、頼んだよ」


スキマを二つ作り、別々に飛ぶ。クー、頼んだよ。





紅魔館そのものには被害は無かった。暴走した雑魚妖怪も美鈴さんに蹴散らされて門前は死屍累々だった。


「そういえば、霊夢さんが湖で戦っていましたね。割と大きい音がしてました」

「ふむ…どのあたりですか?」

「あっちですね」

「分かりました、行ってみます」


…ふむ、手当たり次第ふっかければ自然とたどり着く、か。…本当に容赦ないな。


音がした方向へ飛び、戦いの痕が残る場所にはすぐにたどり着いた。

…そこには、地面に打ち上げられてぐったりとしている人魚が放置されていた。


「…うわー…大丈夫なのかなこれ…」

「…こ、声…?あの、誰か…私を水のある場所まで運んでもらえませんか…?」

「ん、いいですよ。よっと」

「あ、あうぅ!?これ、魔法…?」


…直接触って驚かれるよりは、こっちの方がいいだろうと…重力魔法で浮かせてそのまま運び、水の中に下ろす。


「ありがとうございました…って、あら?あなたは…」

「ん、なんです?」

「前に、湖の底で何か…大きな物と戦ってませんでしたか?」


…ああ、あの時のか。湖に住んでるようだし、見られていてもおかしくないか。


「ええ、そうですけど…僕は八雲黄といいます。あなたは?」

「あ、名前…わかさぎ姫といいます…って、八雲…!?」

「…あー、その反応久々かも…」



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