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東方黄明譚  作者: k.Yakumo
27章 冬の幻想と、外界と
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幻想と交わる狐の兄弟

「…ん、主様。こっちは全部落っことしたよ」

「ありがとな。…さてと、こっちのボスはあんただったね」

「くそっ、離しやがれ!なんで身体が…」

「ここは僕の作った空間だしなぁ。…クー、そっちのボスは?」

「…これだよ」

「こんな小娘にしてやられるとは…」

「…むう、小娘じゃないの」


おや、クーの方も狐か。尻尾は五尾、やっぱり手入れが足りてない。…無性に藍様の尻尾が恋しくなってきたぞ?


「…匂い、とても似てる」

「ん、じゃあ…兄弟かこいつら。名前は?」

「…金月だ」

「…銀刃」


五尾が金月、四尾が銀刃だな、覚えたぞ。


「…お前ら、一体何者なんだ?」

「僕か。僕は八雲黄、幻想郷の管理をしている八雲紫の部下だよ」

「…クー、主様の式だよ」

「八雲紫の部下だと…!?」


一緒に閉じ込めた妖怪達がざわめく。狐兄弟も尻尾の毛がうっすら逆立っている、警戒のレベルが上がるのが遅いよ…


「こっち側の閻魔から幻想郷側の閻魔を伝って、僕に依頼が来たんですよね」

「…マジかよ…」

「……っ」


…なんか勘違いしてるな、皆から漂う絶望感が半端じゃない。


「あー、殺したりなんかはしないよ?ただちょっと人に迷惑をかけすぎだから連行するだけだよ」

「…俺たちをどうするつもりだ?」

「んー、まずは幻想郷に案内するよ。弱い妖怪達がの逃げ場なんかじゃない事を証明してみせようかね」






「…うおぉぉぉぉ!?」

「ぎゃあぁぁぁ!?なんだあの巫女はぁぁぁぁ!?」

「ふっふっふー。蹴散らしちゃっていいのよね?」

「存分に頼むよ、霊夢」


幻想郷、人里と博麗神社のちょうど中間で、妖怪達にとっては阿鼻叫喚の光景が広がっていた。

一人の巫女によって、妖怪の群れが蹂躙されている。


「いっぱい、あなた達にこっちでのルールを教え込んであげるわ、ふふふ…」

「張り切ってるなぁ、ふふ」

「…対応できてるの、狐さん達だけだね」


大体の妖怪が被弾する中、狐兄弟だけはなんとかしのいでいる。


「な、なんだあの人間は!?」

「うぉぉ、あぶねぇ!?」

「あんたらはなかなかやるわね。ちょっと本気を出そうかしら」

「まだ遊びの範疇だったってのか…!?」

「ひぃぃぃぃ!?」

「こっちの人間や妖怪は逞しいぞ、このくらいには」

「「マジかよ!?」」

「はい、隙あり」

「「ぎゃぁぁぁぁぁ!?」」


仲良く被弾したな。…さてと。


「霊夢、そのくらいでいいよ。後でクスハ達が来てご飯作ってくれるから」

「やったー!…あの三姉妹、料理も上手いのよねー」


霊夢のお仕事を労うために派遣していたのだが、どうやら気に入ってくれたみたいだ。


「後は…手下の妖怪はこのまま散らすとして、狐兄弟だな。…とりあえず屋敷に連れてくか」


気絶した兄弟を抱えて、屋敷に戻る事にした。





「…う、ぐ…!?どこだここは…」

「ん、気が着いたか。金月、だったな」

「あんたは…!?」


九尾である事に気がついたようだが…顔が真っ赤だな。一目惚れでもしたかね。


「よう、金月」

「…てめえか。銀刃、起きろ」

「…ぐぅ…なんだよ…って、うおっ!?美人の九尾がいるぞ兄貴!」

「はしゃぐな馬鹿野郎」


…本当は仲いいんじゃないのかこの兄弟。二人とも藍様に一目惚れしたあたり。

藍様も座り、二人を見つめる。


「…君たちは外界で、兄弟ゲンカに人間を巻き込んだようだな」

「「……」」

「…はぁ、同じ妖怪の狐として恥ずかしいぞ…」

「「すみません…」」

「…ま、伸び代はたくさんありそうだし、これからしっかり学んでいけばいいからな」

「は、はい…」

「え、ええと貴女は…?」

「私か?私は八雲藍、紫様の式だ」

「そうでしたか…」

「さてと…本題だ。現在、紫様は冬眠中で、僕と藍様で紫様が行う仕事を代行している。…本当は兄弟ゲンカを止めに行ってる場合じゃなかったんだがな」

「…すまん」

「悪かった…」

「…反省してるならいい、幸い、恐怖に陥ってる人間ばかりだったから改ざんは楽だったしな」

「か、改ざん?」

「記憶をちょちょいと弄ったんだ。…むしろ、記録の改ざんが大変だったなぁ…」


事件として捜査されていた事もあり、そのあたりはとても大変だった。


「…それは本当にすまんかった」

「…ま、それは置いといてだ。…二人には、藍様の仕事のサポートを行って貰いたいんだよね。そこまで難しい事は要求しないから」

「…ふふ、よろしくね」

「「は、はい姐さん!」」

「姐さん!?そんな…」


あ、藍様まんざらでもなさそう。


「あ、その前に。…映姫さん、こちらに」

「ええ…」

「…?なんだこのちっこいの」


ピキッ。


「こんな奴が俺らに何の用だ?」


ピキピキッ。


「…あー、紹介する。幻想郷の閻魔、四季映姫・ヤマザナドゥさんだよ」

「「……えっ」」

「ふふ、ふふふ…きつーいお説教が必要なようですね…黄さん、このお部屋を半日ほどお借りしますね」

「ええ、どうぞ。藍様、行きましょうか」

「ああ…そうだな」

「ちょ、ちょっと待っ…!?」


助けを求めようとした金月の頭を、映姫さんがしっかりと掴む。よく見ると、反対側へと逃げようとした銀刃の頭もしっかり掴まれている。


「…ふふふ、では…」

「ごゆっくりどうぞー」


障子がぴしゃりと閉められる。…紫様がうるさくて起きないように、防音結界を施しておいた。


「…ま、とりあえず解決かね。人材確保もできたし」

「…大丈夫かなぁ、あの二人」


きっちり十二時間後、すっきりした顔の映姫さんと、灰の様になった二人がぐったりしていた。藍様が作ったいなり寿司で復活していたが。





「…そう、藍の負担が減って良かったわ…」

「そうですねー…冬もまだまだこれからですからね」

「……ん」


狐兄弟を藍様の手伝いにしてから一週間ほど経過した。…藍様に気に入ってもらおうと、頑張っている。報酬は手作りいなり寿司らしい。

人里にも出入りさせているようで、どうも寺子屋の子供達のいい兄さん達になっているらしい。たまに変な事を教えているのを見つけて慧音さんに頭突きされているようだが。


「…黄は、突っかかられたりしてない?」

「たまにありますけど、じゃれあいみたいなもんですよ。クーとも遊んでくれてるし…」


クーが二人の尻尾の手入れをしているようで、藍様には及ばないがもふもふになってきているようだ。


「…へぇ、そうなのね…」


紫様は微笑みを浮かべて、僕に寄りかかってきた。


「春になるのが楽しみですね」

「…ふふ、そうね…」


雑魚妖怪は各地に散り散りになったようです。


冬編はまだまだ続くんじゃ。

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