外界:主と式の共同調査
後日、もう一度彼岸へ行くと…映姫さんはにこやかにしながら応接室へと招いてくれた。
「依頼、受けようと思います」
「それは良かったです…向こうの閻魔もかなり困っていたようですから」
「…そんなに酷いんですか、状況は」
「…既に被害に遭った人間は二桁にのぼるようです。それと…どうやら、妖怪は複数いるようで…」
「根拠は?」
「死因の違いです。毒殺だったり、失血死、または傷を受けた際のショック死等…多岐にわたります。そこまで多数の、殺害のための手を持つ妖怪というのはなかなか存在しないので」
「…なるほど」
確かに、妖怪はある一つの事に特化している事が多い。ならば、複数と考えた方がいいか。
「貴方であれば大丈夫でしょうが…気をつけてください。貴方はなるべくその能力を見られないように、この依頼を遂行する必要が…」
「ええ、わかっています。…複数、か。おそらく影で統率している妖怪なんかがいそうだな。…映姫さん、誰かを連れて行くのは可能ですか?」
「…貴方の精霊は、外には出せませんね。目立ちますから。式であれば…大丈夫でしょう」
「十分です。妖怪の匂いを辿れば…」
「ああ、そういう事でしたか。…ちゃんと妖怪である事をばれないようにしてから行ってくださいね」
「ええ、では準備をして、すぐに向かいます」
◆
「…外の、世界?」
「うん、ちょっとお仕事だ。クーにも手伝って貰おうと思って」
「…やった、嬉しい」
ぴょんぴょんと跳ねているクー。…そんなに嬉しかったか?
「…主様の役に立てるから」
「…ふふ、そうか。…じゃ、まずは…」
クーの頭に手を乗せ、イメージしていく。
「…むずむずする…」
「ちょっと我慢しててな。向こうに行くために必要な準備だから」
狼の耳を隠し、人の耳を代わりに付ける。聴力はそのままで。
「…よし、できた」
「…わ、ふにふにしてる…あ、主様と一緒の耳?」
「うん。外界では目立つからね。…最初に人里に行った時も、帽子で隠してたでしょ?」
「…あ、そっか…じゃあ、こっちも?」
「うん、尻尾もだね。よっと…」
尻尾を背中に密着させて…そのまま隠す。
「…変な感じ」
「調査を終えて家にいる間は出しといてあげるからね」
「…わかった」
「よし、じゃあ…いこうか。調査をさっさと終わらせて紫様の世話をしなきゃなんないからな」
「…おー」
◆
「…あうう、いろんな匂いがする…」
「…まず外界の匂いになれさせないとダメか。少し見立てが甘かったかな…」
外界の空気は、幻想郷のものよりも汚れているし、匂いもいろんなものが混ざるのだろう。クーは鼻を押さえてうずくまってしまった。
「…ごめんな」
「…ううん、大丈夫…頑張る…」
「無理しちゃダメだよ。…そうだな、今日は一日家でゆっくりして慣れよう」
「…うん」




