心綺楼:神喰らう狼の顕現(予想外)
「あっはっは、儂じゃよ儂」
「何だ、さっき吹っ飛ばしたはずなのに出てきた神子はあんただったのね。…どうりで変だと思ったわ」
「ふふ…どうだ、儂と一戦交えんか?」
「いやよ、あんたと戦っても得るものがないし」
「これでもか?」
「ぐ…応援する観客が居るんなら逃げる訳にはいかないわね、狸とはいえ」
「そうじゃろうそうじゃろう。さあ今度こそ…」
「ちょっと待ってー!」
「…む、黄?何よ…今から戦うところだったんだけど」
「その戦いは私に任せて、霊夢は休んでて。…元凶は夜中の人里に出るみたいだから!」
「…ふーん…」
「むむむ…まさか見知らぬ者からネタバレをかまされるとはのう」
なんとか、間に合った…!
「だから、霊夢は…そうだな、命蓮寺あたりで身体を休めてて。連戦で疲れてるでしょ?」
「疲れてないわよ、異変の時はいつもこんな感じで…」
「普通の時とは違って防御とかも必要になるから、疲労は思ってるよりも多いはずだよ。…ちゃんと休んで」
「…仕方ないわね。マミゾウ、勝負はまた今度ね!」
「あ、ちょっ…むぐぐ…」
霊夢は人里方面へと飛んでいく。
周辺に居る狸は恨めしげに見ているけど…マミゾウさんはいつも通り飄々としている。
「…仕方ない、ちょっとだけイラっとしたから、お主で憂さ晴らしをするとしようか。名は?」
「八雲黄だよ…訳あって今はこの姿だけど」
「なんと、お主…変化もできたのか…なるほどのう」
ケラケラと笑うマミゾウさんに、隙はない。…やっぱり強いんだろうなぁ。
「では、始めるとしようかの。ギャラリーも待ちきれんようじゃ」
「…はい!」
◆
「…ほほう、なかなかやるじゃないか。伊達に賢者の右腕はつとめておらんか」
「…むう…」
いろんな武器を使ってるけど、その態度と同じように飄々と避けられてしまう。…どうしたものか…
「考え事をしておる暇は無いと思うぞ?変化『二ッ岩家の裁き』」
「あっ、やばっ…」
スペルをくらってしまった…これは…!?
「ふふふ、お主はどんな姿になるのであろうな…」
変化して、朦朧とする中で…細剣と杖を無意識に握る。
「う、うぅぅぅぅっ……!!」
「…あ、あれ?こんなに煙が大きくなる事はあるはずが…」
なんか、身体がどんどん大きくなってる気がするよ…?
「…ワフッ!!」
「…え、えぇー…」
…なんか、マミゾウさんすごく小さくなってるような。というか狸達がどんどん逃げていくんだけど。
「…ワフワフッ(マミゾウさん、私どんな姿になってます?)」
「…え、ええと…鏡とかあっただろうか…というか全身映るか…?」
「きゃー!可愛いー!」
背中にちょっとした衝撃を受けて、それを見てみると…紫様が抱きついて…って背中がモフモフになってる!?
「ワ、ワフフワフッ?(ゆ、紫様?)」
「待ってて、すぐスキマで姿を見せてあげるから…はい」
スキマの向こうにあった私の姿は…巨大な狼になっていた。
「ワ、ワオーン!?(え、えぇぇぇぇっ!?)」
◆
すぐにクーも来て、私の身体のモフモフを堪能していた。
「…柔らかい、もふもふ…」
「…ワフッ(…どうしてこうなったんだろう)」
「うーむ…外的要因でそうなったというしかなかろうな。…なんかしたかのう?」
「…ワフ、ワフワフッ(変化の途中で、ジリョーヌイの杖とアスルの細剣を握ったような…)」
「…なるほどね、たぶん精霊の影響を貰ってその姿になったのね」
「…主様の姿、フェンリルに似てる」
「ワフ?(フェンリル?)」
「…えっとね、北欧神話に出てくる狼さん」
…なるほどねー…何故か二つの属性が混ざった結果そうなった、と。…たぶんユグドラシル関連を調べてた時に頭の片隅にあったのだろう。
「…ワフッ(どのくらいで戻るんでしょうこれ…)」
「さあ…儂にも分からんよ。イレギュラーが多すぎるからの」
「とりあえず堪能させなさい…ふふ…」
「…主様、尻尾で包まって寝てもいい?」
「…ワフ、ワフワフ(いいよ、紫様もどうですか?)」
「…じゃあ、お言葉に甘えて。…はぁ、暖かい…」
結局、朝方になるまで私の姿は戻らなかった。…霊夢、大丈夫だとは思うけど…うーん…
他の属性が混ざるとどうなるんでしょうね(白目




