神霊廟:冥界にて
「…んー…ということは、冥界から霊が出ちゃってる訳ではない、と」
「ええ、そうよ〜。今、下で溢れている霊は神霊の子供ね」
幻想郷のさまざまな場所で、正体不明の霊が出たり消えたりするようになっている。
異変だと判断したので、霊夢が動いているのだが、真っ先に冥界へと向かうのを止めて、僕が先に調査している。
「神霊、ですか?」
「ええ。人間の思念から生まれるもので、主に欲が具現化したものね。ほら、黄の近くにも出てるわよ?」
ふと横を見ると、何かがふよふよと浮いていた。
つんつんと触ってみる。…なんとも言えない感触だな。
「んー…となると、どこから探せばいいのやら」
「…そうねぇ。ヒントをあげようかしら。…お寺の裏の墓地が怪しくないわよ」
お寺…命蓮寺か。
「…霊夢、命蓮寺の裏のお墓の調査を頼むよ」
「ん、やっと聞き出せたのね、待ちくたびれたわ。じゃ、向かうわね」
「なるべく僕の仕事を、」
「増やさないのは無理よ?出てきたらぶちのめすのが私の仕事なんだから」
「…そうでした」
「ま、そこで一服してから来なさいよ。私はすぐ向かうから」
「了解、気をつけて」
スキマ通信を切り、妖夢が入れてくれたお茶を飲む。
「…そういえば、妖夢は平気なんだな。幽霊とか怖いのに」
「放っておけば消えるし、厳密には幽霊ではないとわかりましたから…」
「…そっか」
煎餅を一枚取ろうとして、皿がすでに空っぽになっている。…幽々子さん、食べるの早すぎるわ。
「…んー…」
「黄さんはまだ動かないでいいんですか?」
「こういう異変ならアフターフォロー専門だからねぇ…事が起こってからじゃないと動いちゃダメって言われてるんだよ。…一応、精霊をつけておいてすぐに事件の始まりは察知できるようにしてあるけどね」
今回、霊夢にはミソウをつけてある。まぁなんというか…不運な被害者が出た時点で連絡が来る。
『…主、霊夢さんが命蓮寺前で交戦中…すぐに終わると思われます』
「…ん、わかった。…じゃ、行ってきますね」
「ええ、いってらっしゃい〜」
…さぁ、異変の解決を見届けに行くとしよう。
神霊廟編開始です




