閑話 受け継ぐ想い
僕と、瘴気の獣の戦いが始まりを告げたあの森を、今日は検査していた。
浄化してもこもり続けていた瘴気が、元の世界を浄化したことでなくなったのだ。
「…んー、細かく穴が空いててそれで瘴気が出てたのか…全部塞いでおかないとな」
どうやら、ここに小さな繋ぎ目が無数にできていて向こうの瘴気が漏れ出していたようだ。
すぐに、それを塞いでいく。
「さてと、こんなものか…ん?」
帰ろうとした所で、木の根元にある白い何かを見つける。
それはまるで、牙のようだった。
「…持って帰って、聞いてみるか。他には…」
◇
「おかえり、黄」
「おかえりなさい、主様」
帰ると、藍様とクーが出迎えてくれた。尻尾がゆらゆらと揺れていて…ああ、もふりたいけど今は我慢だ。
「…ん、主様…懐かしい匂いがする」
「ああ、クーと初めて会った森に行ってきたんだよ」
「…そうだったの。…でも、それだけじゃない…」
「…クー、これを見つけたんだ」
懐から、拾った牙のようなものを取り出す。
「……」
クーは、鼻を近づけてそれの匂いを嗅いで…涙を流し始めた。
「…これ、は…お母さんの…」
「やっぱりか…」
牙を抱きしめて、クーの涙は止まらなくなっている。
「…お母さん…」
「…ごめんな、それしか見つからなかった」
「…主様、ありがとう…」
「…ん、少し待っててな。肌身離さず身に着けられるようにした方がいいでしょ?」
「…うん」
牙に穴を開けてから、壊れないように魔法をかける。土魔法をベースに使える全ての属性の魔法を込めた。
そして、穴に紐を通して、クーの首にかけてやる。
「…これで、いつでもお母さんと一緒に居られるな」
「…うん!」
牙を持って、涙を流しながら…クーは嬉しそうに頷いた。
◇
次の日に訓練をしてみると、クーの動きが数段階上のレベルへと引き上げられていた。
どうやらクーのお母さんの思念のようなものが込められていたらしく、魔法のアイテムのような効果を持つに至ったらしい。
「…えへへ。主様と、お母さんのおかげで…私、もっといろんなものを護れるよ…」
「ふふ、そうか」
クーの耳と、尻尾をもふもふしながら縁側でゴロゴロする。
…瘴気の獣から、皆を守ったクーのお母さんは、今のクーを見たらどう思うだろうか。
そんな事を思いながら、すやすやと眠りに落ちているクーの寝顔を見るのであった。
次回から第二部【異変を見守るモノ】を開始しようかと思います。
まずは星蓮船から!




