閑話 ある一日の始まり
…もぞもぞ。
私は、もふもふの中で目を覚ましました。
「…んむ…」
「む、起きたか。もうすぐ黄が起きる時間だぞ」
「…はーい」
私は藍さまの尻尾の間から出ます。
どうやら、昨日は橙と一緒に寝てて…寝ぼけて入ってしまったようです。
藍さまの尻尾からは、二本の黒い尻尾が覗いています。…橙も入ったみたいです。
「おはようございます、藍さま」
「うん、おはようクー。黄を起こしてくれるかな」
「…はーい」
藍さまに言われた通りに、私は主様のお部屋に向かいます。
「……」
「主様、起きる時間ですよ…」
主様の身体を揺すって、起きてもらいます。
「んー…クーか…?」
「…朝ですよ」
「うぅ…ん…」
主様は伸びをして、身体を起こします。
「おはよう、クー」
「…おはようございます、主様」
これが、私の主様です。
私よりもずっと強くて、私が叶わなかったあの化け物を倒してくれた人。
私は、主様に一生ついていくつもりです。
「んん…さて、僕は紫様を起こしに行くから、藍様を手伝ってあげて」
「…はーい」
主様に撫でられて、上機嫌で私は藍様の所へと戻ります。
「ん、起こせたか?」
「…うん。紫様を起こしに行くって」
「む、そうか。…橙、そろそろ起きなさい」
藍様が尻尾を揺すると、橙の顔が尻尾の間から出てきました。
「ふみゅう、あと五分…」
「クーはとっくに起きてるぞ、まったく…」
「…ふふ、橙。起きてー」
ほっぺをぺちぺちして、橙を起こします。
「…むう、クーやめてよー…」
「…やめて欲しかったら、早く起きて」
「…うう、まだ眠いのにー…」
橙を尻尾からは引っ張り出して、寝癖のついた頭を整えてあげます。
「クー、橙、食器の準備をしておいてくれ」
「…うん」
「はーい…ふぁぁ…」
寝ぼけてる橙と一緒に、私が準備をしていると…
「ぎゃーっ!?」
「…主様、またスキマに落とされたみたい」
「まったく、今度はどんな起こし方をしたんだか…」
主様は、主様の主様である紫様と恋人同士です。
だから…たまに、そういうこともするみたいなのですが…
「…ぐえっ!?」
「…主様、今度は何したの」
「ちょっと布団に潜り込んだだけ…たぶんその時に胸に手が触れた…」
「普通に起こしなさいよ馬鹿!」
紫様が顔を真っ赤にしながら部屋に来て、主様のほっぺをパシンパシンと叩いています。
「…紫様、そのくらいにしておかないと主様のほっぺがりんごみたいになっちゃう。紫様のお仕事が増えてしまいますよ…」
「…それは困るわね。ほら、さっさと自分で治しなさい」
「…酷いですよ紫様ー…」
「…ん、主様」
座っている主様の上に座って、すりすりします。私の日課なのです。
「…くすぐったいぞ、クー…」
「…えへへ」
「さ、皆揃ったし、食べようか」
「そうね。じゃあ…」
「「「「「いただきます」」」」」
私たちの一日は、こうして始まるのです。
クーの視点より、八雲の屋敷の朝をお送りしました。
というかクー視点で一日を書こうと思ったら思った以上に分量多くなるぞこれ…!?
いくつか閑話を挟んでから、第二部を開始します。




