逆鱗
裂け目から身をよじるようにしながら出てくる黒い龍は、雷撃を飛ばしながらこちらに向かっている。
僕は、光属性の力を全身に纏って、光速で動きながら雷撃を避けつつ接近する。
「はぁぁぁっ…!」
刀に変形させた武器で斬りつけるが、弾かれる。…鱗が異常なまでに硬い!
「くっ…全身が鱗で覆われてるな…」
一度距離を置いて、未だに全身が裂け目から出てきていない龍を観察する。
普通、絵画などで描かれる龍は、腹の部分は鱗で覆われてはいないのだが、目の前にいる瘴気の龍はその身を完全に鱗で覆い、その防御力は半端な物ではなさそうだ。
…ハンマーに変形させて叩いて、内部に衝撃を伝えるか…あるいは…
「…地道に剥がすか、それとも顎で丸呑みにするか、だな」
丸呑みにするのは、奴が全身を出してからでないと不可能だが…
「…出ようとしていないみたいだな。何をしようとしてるのかバレてるのか?…とりあえず、適当にいろんな場所を斬って叩いて壊す努力はしてみるか…!」
光速の斬撃を、様々な場所に当ててみる。
眼球をついた攻撃は、その目が薄く硬い膜のようなもので覆われているのか効かず、角を付け根から折ろうとしてハンマーで叩いてみたが、手が痺れただけだった。
更に、顔の周りを中心に斬りつけてみる。
ちょうど、顎の下あたりに刀が当たった時だった。
「グルァァァァァァァッ!!!」
「うおっ!?」
敵の落雷の数が突然増え、龍そのものも暴れだした。これは…!
「…逆鱗、か!でも、あの場所だけ手応えが違ったな…弱点でもあるみたいだ!」
土魔法の防御を、二重三重にかけるが、それすらも貫く勢いで雷が落ちてくる。雷がある程度おさまるのを待ちつつ、光魔法の力を更に自身に強く纏わせてその時を待つ。
…次は、貫く!




