茹で上がる天人の娘
「では、総領娘様をこちらにお呼びしますので少々お待ちください」
「わかりました」
大きな屋敷、客間らしい所に通された。
衣玖さんは誰かを呼びに行き…萃香さんと待つことになった。
「…どうなることやら」
「ちょこっとだけツンツンしてるけど、まぁ、いい子だからさ」
…大丈夫かなぁ。あまり怒らない紫様を怒らせたってのはなぁ。
「お待たせしました。総領娘様、こちらへ」
「…ふーん、あんたが噂の…」
「八雲黄です。…ええと」
「比那名居天子よ、よろしく」
差し出された手を握り、握手。
その瞬間、天子さんの表情が複雑なものになる。
「…何、これ?」
「どうしました?」
「あんた…何なの?混ざり合いすぎじゃない!?」
あぁ、精霊の事を言っているんだろうな。
簡単に、僕がこちらに来てからの出来事を教える。
「ぐぬぬ…そんな面白い事になってたのね…地上に遊びに行くべきだったわ…」
「当事者としてはかなり大変だったんですけどね…」
「いいじゃない、ハプニングは成長のためになるんだから。天界の代わり映えしない生活はとても退屈よ」
隣に座った衣玖さんは頭を抱えている。だいぶ苦労しているようだ。
「しっかし、あいつに人間の従者ができるなんてねー…考えられないわー…そういえば元気にしてるの?」
「ええ。…先日も添い寝を、」
「いい加減になさい、黄!恥ずかしいでしょうが!」
「あいだだだだだだ!?」
いきなり出てきた紫様がアームロックを仕掛けてきた。…ふりほどけない!?
「折れます、折れますから!」
「あんた、折れてもすぐに戻るでしょう!?」
「いつ瘴気の獣が出てくるかわからないのに怪我できませんって!」
「そういうと思って永遠亭ですぐ骨折が治る苦い薬は用意したわ!」
「やたら準備いいですね!?」
「………」
紫様が出てくる直前から天子さんは赤面したまま固まってる。
「…どうしました、天子さん?」
「…そ、そそそ…添い寝…?」
「ええ、そうですけど」
「………あう」
「総領娘様!?」
何故か茹で蛸のようになった天子さんが倒れた。…何を想像したのだろう?




