鬼遊びを振りほどく
「えーと…黄さん?貴方の周辺だけ何故か気温が高いような…」
「乾かすために風と炎の複合精霊魔法を使ってるからです。流石に濡れたままだと家には入れないでしょうし」
「着替えなら用意できますのに…」
「手を煩わせるのもどうかと思いますから。えーと…」
「…ああ、自己紹介がまだでしたね。私、永江衣玖と申します。どうぞよろしく」
所作がなんだか優雅な人だ。…いや、人ではなく妖怪か。
「…何の妖怪なんだろう」
「私ですか?」
「あ、いえ…聞こえていましたか」
「今は私と黄さんしか飛んでいませんからね。私は竜宮の使いです」
「竜宮の使い…」
「私の役目は総領娘様のお世話と…人間に対して忠告をするくらいですけれど」
…そういえば博麗神社がぶっ壊れたという異変が過去にあったっけか。後でちゃんと確認しておこう。
「もうすぐ総領娘様の所へ着きますが…」
「あれー?黄じゃん。こんな所で何してるの?」
「…萃香さんこそこんな所で何を」
フラフラと雲の上を萃香さんが歩いていた。というか歩けるのその雲?
…おそるおそる足を付けて浮遊を解くと確かに足場として機能していた。
「私は適当にふらついてただけだよー。このあたりは散歩コースだからねぇ」
「へー…」
「それより、黄は例の調査の続きかい?」
「はい、調べていないのは天界くらいですからね」
「なるほどねぇ…」
「例の調査とは、なんですか…?」
「あ…纏めて説明しますからまずはその…」
「…分かりました。総領娘様の所へ」
「私も付いて行こうかねぇ」
「…お酒が飲みたいだけなんじゃ」
「失礼なー、私だって黄が一応心配で付いてってやるって言ってるのにー」
「いだだだだ、腕が!」
茶化そうとしたら腕を極められた。シャレにならない音が腕から…!
「やめ…っ、て!」
「うわっ!?…本気じゃなかったとはいえ力ずくで外されたよ…」
萃香さんが割と驚いているけど、僕も驚いた。外れると思わなかった…
「私自身には何もされてないのに…肉体強化とか使えるようになったの?」
「精霊魔法の応用みたいなもんでできます。…無意識に使ったのかな」
突然襲われた際に咄嗟に肉体強化が発動するのを知れたのは結構役立つかも。
「…あのー、行きますよ?」
「ああ、すいません。すぐに」
「あはは、ごめんごめん」
衣玖さんの後について行く。…さて、ようやく会えるか。




