雷雲内の照れ隠し
冥界、白玉楼へ続く階段を過ぎる。
更に上へ上へ。
「…空気がだいぶ薄くなってきてもおかしくないんだが…意外と平気だな」
更に数分飛ぶと、いきなり雷雲がたちこめてくる。…近いみたいだ。
「…おや、人間…珍しいですね」
ふよふよと、こちらに飛んできた女性は僕に警戒はしていないようだ。物珍しそうに見てくる。
「えーと…天界ってこっちで合ってます?」
「はい、合ってますけど…どのような…」
女性はここで僕の服装に気づいたようだ。
「貴方、八雲紫の関係者ですか?」
「はい、従者の八雲黄です」
「八雲黄…ああ、総領娘様が何か話していましたね。地上に八雲紫に仕える物好きな人間が出たらしい、と」
「…物好きとはなんですか、失礼な」
「私の意見ではありませんので。…どうして八雲紫の従者に?」
「えーと…最初は僕が記憶喪失の時に拾われまして…今は…」
「今は?」
「…紫様が好きだからっ!?」
ガン、と頭に衝撃と大きな音が響いて思わずうずくまる。
いきなり金だらいが落ちてきた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫です…紫様、見てたみたいで…たぶん照れ隠しっ!」
またタライが落ちてきた。衝撃が思ったより強かった上に…
「冷たっ!?」
「氷水が入ってますね…」
照れ隠しにしてはきつくないですか紫様…
「うぅ、寒い…」
「えーと…とりあえず総領娘様の所でお話を聞きますね。その状態では辛いでしょうから」
「ありがとうございます…」
なんやかんやで天界には入ることが出来そうだ。




