瘴気≠厄
気配の方向へ、道無き道を進んでいくと…目当ての厄神様はそこにいた。
くるくると回りながら、瘴気に似たそれを纏っている。
「今日も厄が沢山漂ってるわねー…」
「あのー、すいません」
「あら、天狗さん…じゃないわね。それにその服…」
「八雲黄、といいます。鍵山雛さん…ですよね」
「ええ、そうよ?私に何の用かしら?」
呼びかけると、回転をやめて柔らかく微笑みながらこちらを見ていた。…うーむ、紫様や藍様とはちがったお姉さんタイプか?
「今集めていたのは…」
「ん、厄よ。山に漂っていた厄や、その他の所から流れてくる厄を私自身に溜めているの」
「…大丈夫なんですか?」
「それが私の能力であり、いる意味になるから。…私は元々流し雛だったし」
「…なるほど」
「…綺麗、だけど可愛い」
「あら、ありがとう。…天狗さんかしら?」
「いえ、僕の式神です」
「…クーです」
「ふふ、よろしくね」
◇
「ああ、どこかで聞いた名前だと思ったら…山の英雄さんだったのね」
「そんな大層なもんじゃ無いですよ…元の原因は僕にあるようなものですから」
「…瘴気、か。私が集める厄よりもずっとタチが悪いわね」
「まったくです…」
厄というものは、溜め込むと不幸になるという、蓄積されて効果を発揮(?)するものだが、瘴気の場合はそのものが少量であっても害をなす。
山が瘴気で覆われた時、雛さんも瘴気を取り込もうとしたらしいのだが、すぐに身体がおかしくなったそうだ。
「身体の調子はもう大丈夫なんですか?」
「ええ。…でも、なんというか…少しだけ残滓が残っているような気もするのよね」
「…浄化、しておきましょうか?」
「できる…のよね。山の全体浄化を行った貴方なら」
一つ頷いて、手をかざす。
光の魔力で雛さんを包み、瘴気の残滓を探す。
「そういえば、河童達は大丈夫だったのかな…天狗の皆には個別に浄化しなおしたけど」
「ん、あの子達の分も…私に移しておいたから、河童達は大丈夫だと思うわ」
「そうだったんですか…だったら尚更、雛さんの浄化をちゃんと行う必要がありますね…」
身体に根付こうとする瘴気の残滓を、浄化して消し飛ばす。作業は数分で終わった。
「うん、身体がとても軽いわ。これなら厄集めもはかどりそう」
「それは良かったです…もし、また瘴気が出てきたなら取り込もうとせずに逃げてくださいね?」
「ええ…分かったわ」




