原点、とは言い難し
ある日、僕は妖怪の山を探索していた。
「…確か、この辺りだったかな」
「私の覚えている範囲でも、間違いないかと思います。…唐突に現れましたから、よく覚えていますよ」
椛と一緒に訪れたのは、僕が幻想郷で訪れた…否、落とされたという表現が正しいような気がする。
いわば、幻想郷での僕の始まりの場所だ。
「…うーん、何もない、か。それらしい魔力の残滓すら見つからない」
「黄さんが八雲紫に連れていかれた後、このあたりをいろいろ探しましたが何一つ見つかりませんでしたからね…」
「ああ、椛が落ち込む事は無いよ。あくまで『もしかしたら手がかりがあるかもしれない』、くらいの気持ちだったからさ」
「…椛お姉ちゃんは、悪くないよ」
「ん、ありがとう…」
いつの間にそんな呼び方するようになったんだ、クーは…どうやら遊びの範囲が結構広いようだ。
「さてと…後は川の方も調べてみたいけど、河童がいるんだったっけか」
「はい。うかつに入ると怒られますが…話を通してからなら大丈夫だと思います。私がたまに将棋を指して遊ぶ…河城にとりが近くに住んでいますから、行きましょう」
「…ん、にとりの所…?」
「ふふ、そうよ」
「あれ、クーは知ってるのか?」
「…うん。川に落ちそうになった私を助けてくれたの」
「…こら、今ちょっと聞き捨てならない事が聞こえたんだが」
「…あっ」
「危ない所には近づかないように、って言ってたのに…」
「…ごめんなさい」
「…ま、無事だったからいいけど…僕からもお礼を言わなきゃ」




