記憶の海に沈む真実
阿鼻叫喚、そんな風景が広がっている。
瘴気の獣は、僕の側にいた研究員達を次々と食らう。
…中には、魔法で抵抗しようとするものもあったが、その魔力ごと瘴気の獣の牙や爪に貫かれていた。
呆然と立ち尽くしているが、僕だけが襲われない。
…僕は、光の精霊を造った彼女が最期に遺した障壁の中から、それを見る事しかできなかった。
「…ぐ、ぅ…」
闇の精霊を造った老人が、下半身を無くした状態で這ってこちらに近づいてくる。
「…我々、の…希望だけは、潰えず…」
直後に訪れる浮遊感、それは足元に空間魔法の穴が出来たと気づくのに時間はかからなかった。
「待ってくれ、君たちは…!」
落ちていく中で、頭の中に声が響いてくる。
ーー我々の世界は、もはやこれまでだ。
ーーだが、君が生きていれば、希望はある。
ーー生きよ、そして…
ーー我等が造った精霊と共に。
ーー…そうすれば、君の秘めた力も…
声は、だんだんと小さくなっていく。
ーー…腕輪……解放……
ーー…精霊…全て………
…ああ、これはやはり僕の記憶だろう。
そして、僕が元いた世界は………
「……ん、やっと目が覚めたか。…まだ顔色が悪いな」
「…ここは、直さんの拠点…?」
「あの龍にトドメを刺した直後にぶっ倒れたんだ。…覚えてないのか?」
「……言われてやっと思い出しましたよ…そうだ、精霊玉は…」
「ああ、ここにあるぞ」
直さんから手渡されたのは、冷気を発する精霊玉。
…これで、七つか。けど、それよりも気になったのは…
「…直さん、僕…すぐに紫様の所に戻ります」
「…本当に大丈夫か?」
「はい…すぐに紫様に伝えたい事があるんです」
「分かった、気をつけてな」




