樹氷の迷宮ー2-1
さほど手こずることもなく階段の前に鎮座していた龍を倒し(直さんが【アルケミスト】というものになって電気で痺れたところをボコボコにした)、降りてみると確かに冷気が増した。
「…おかしい」
「どうしました?」
「一個階段を下っただけでここまで寒くなるはずが無いんだ。…やはり何か起きているようだな」
「さっきの龍もこの冷気に耐えられずに上がったんだが…上が暑くて動くに動けなかったんだろ」
え、あれでも暑いのか…?
「魔物が動ける温度ってのも関係して、殆ど外に出てくる事はないんだ」
「そうなんですか?」
「一応、岩で塞いでいたけど…あれは何も知らない人間とかが入ってしまうのを防ぐ意味合いの方が強いな」
聞くところによると他にも迷宮があるのだが…溶岩の迷宮だったり、風が吹き荒れる迷宮などがあるらしい。
その環境に適応した結果、迷宮の中でしか生きられないようになった魔物が殆どだという。
「適応した結果、面白い味になったりするんだけどな」
「…結局味の問題になるんだ…」
「迷宮での食料確保もしなくちゃならないからな」
クロウさんが背負う鞄の中には調理用具一式も揃っていたが…それよりも気になるものを見つけた。
「これは?」
「あぁ、【戻り糸】か。使うと迷宮の入り口に戻れる。原理は知らん」
「えー…」
「なんでか河童が量産出来たんだが、本来は門外不出のレシピでできるらしいんだよな…」
河童の技術ってどうなってるんだ…今度聞きに行ってみようか。天狗とはもう知り合いだから話はできるはずだ。
「おい、これを見てくれ!…一体何が起きたってんだ…」
「なんだ、クロウ…って、おい、これ…」
「…魔物が、全部氷漬けになってる」
まるで、そのフロアの中心から吹雪が吹いたかのように。
魔物が一匹残らず氷の中に閉じ込められていた。




