変幻自在と一撃必殺
「氷に関する迷宮の位置…知ってどうするつもりだ?例え紫さんの関係者だったとしてもおいそれとは教える訳にはいかない」
「それは危険だから…ですか?」
「…そうだな。例え強い妖怪だったとしても危険な場所なんだよ。…藍さんも死にかける程度にはな」
「……」
…なるほど、それは…確かに危険かもしれない。けれど、今の所…氷の精霊に関してだけは手がかりがどうしても無いのだ。
「…それでも行くというなら、俺たちが実力を見て、更に俺たちが同伴する事になる。いいな?」
「分かりました。…じゃ、行きましょう」
人里の外れ、何も無い平原に僕らは居た。
「とりあえず、まずは攻撃力、防御力…後は攻撃に対する反応の速さなんかを見てみたいところだな」
「分かりました。どうすればいいですか?」「まずは攻撃力を見る。…チェンジ【パラディン】」
直さんが、左腕の籠手の石の一つに右手を当て…そう呟くと、光に包まれ、服装が…いや、装備が一変する。
白銀の全身鎧に、これまた白銀のハンマー。そして身体全てを隠せるような大きな盾。
…パラディン、と言ったか。確かに防御を完璧に固められるだろうな。
「…とりあえず、君の全力を打ち込んでみろ。それで判断する」
「分かりました…っ」
BW・ヴァリアブルを大剣になる直前、棍棒のような形で一気に殴りつける。風の加速と、火の強化を重ねて、威力は十分…!
「…っ、らぁ!」
「ぐぅっ…!」
吹き飛ばす勢いで殴ったにも関わらず、直さんは両脚で踏ん張って耐え抜いた。脚と盾が地面を引っ掻いた跡がくっきりと残っている。
「…なるほど、やるね。攻撃は合格。次は防御だ。クロウ、頼むよ」
「おう。…準備しろよ?」
言われるまでもない。…あの槍は見た目は普通だが、かなり強力だ。
土の魔力を込めながら、BW・ヴァリアブルを盾の形に変形させて受け止める体勢を作る。
「…よし、準備できたか。いくぞ!【精霊槍・炎】!」
「くっ、うぅぅっ…!」
うわ…っ、なんて威力だ…!さっきの直さんのように引きずられて…後ろに気配!?
「っ、おぉっ…!」
無理矢理に盾の方向を変える。…さっきまであった炎を纏った槍とクロウさんの気配は無いからな!
「【精霊槍・雷】!」
「はぁぁぁぁっ…!」
盾に角度をつけてそのまま受け流す。
地面に突き立てられた槍からは雷が迸る。
「…はぁ、あっぶな…!」
「反応速度も十分だなぁ。完全に突くつもりでやったのに」
「えー…刺さってたらどうするつもりだったんですか…」
「その時は直が直すから。ほら」
指差した方向を見てみると、直さんの姿が白衣に変わっていた。医師かなにかになったのか…?
「ま、とにかく…合格だな。それじゃあ戻るとするかね」




