三姉妹の決心
「…おお、すごい。断面が綺麗だな」
「…キリさん、上手にいろんな物を斬るの」
鎌鼬三姉妹の幻想入りから数日。
僕たちは妖怪の山、参道の中腹あたりから伸びた…真新しい切り株が並ぶ、文字通り切り拓かれた道を歩いていた。
クーを介して、幻想郷のルールを教え、この山の皆に紹介をして…本当にクーはよく働いてくれた。
「…主様、何?」
「いや、この何日かよく働いてくれてたからご褒美」
「…私は、いつもご褒美もらってたのに…」
帰ってきて、ご飯までの間に眠っていたクーを膝枕していただけなんだけど…ご褒美になってたのか。
「…見えてきたよ」
「また立派な家をこしらえたなぁ…」
一軒の家屋が、ぽつんとそこにあった。…これ数日で建てちゃったのか?
「…こんにちはー」
「はいはーい…あら、いらっしゃい。よく来てくれました」
出迎えてくれたのはフウさんだ。…後ろにはキリちゃんも居る。
「こんにちは。…立派な家ですねぇ」
「ふふ、天狗の皆様が手伝ってくれたんです。皆さんいい人たちですね」
「ああ、そうだったのか。それにしても…」
「ん、なんだ兄さん?」
「道を切り開くのはいいんだが、あのままだとまた木が生えてくるぞ?」
「いいのいいの、私がまた斬ってやるんだから」
「…まったくもう。フラーウム、頼んでいいか?」
「うん、いいよー!」
「うわっ、いきなり出てきた!?」
「あっちの切り株を全部引っこ抜いてきてほしいんだけど」
「わかった、やってくるねー!」
フラーウムは走り出し…すごい勢いで切り株を抜き始めた。
…キリちゃん、口が開きっぱなしになってるぞ。
「…なるほど、以前の貴方とは違う…違和感がありましたが、その子…だけじゃない、様々な力が貴方の中にありますね」
「あー…精霊が中に居ますから」
外界に出る時は、全員…僕の力で包んだ状態で外に出してみたんだっけ。結界に影響が出ないかのテストも兼ねてたけど、成功だった。
「なるほど…」
「…姉さん、立ち話になってる」
「あら、ごめんなさいね。ささ、上がって」
「ええ、お邪魔します」
「…お邪魔します」
「さて…改めて、私たちをこちらに連れてきていただき、ありがとうございます」
「いえいえ、別に大した事はしていませんよ」
「それでも感謝してるんだぜー。こっちに来てから私の鎌の斬れ味も増す一方だから、ふみゅっ!?」
フウさんがげんこつを落とす。
「痛いな姉さん!」
「物騒な事言わないの。貴女だけが暴走したら大変なんだから」
「…私のお仕事、増えちゃう」
「分かってるよ…」
「…話が逸れてしまいましたね。とにかく、黄さんや紫さんには感謝の気持ちばかりが…」
「でさ、何か恩返しができないかなって話し合ったわけよ」
「…恩返しですか、そんな…」
「…私たちが、ちゃんとしたいの」
恩義を感じてくれるのは嬉しいけど…うーん。
「…確か、クーちゃんは黄さんの式神になっているんですよね?」
「そうですけど…まさか」
「…ええ、貴方が考えている通りです。どうか、私たちを式神にしてください」




