気負う事はない
「まぁ、一言で言ってしまえば…もうこちら側では私達は生きづらいのですよ。私達の存在は…もはやこちら側では消えかかってしまっているとも言えます」
「…やっぱり、その理由だったわね」
紫様曰く、妖怪や神が幻想郷に来るのは…外界で忘れ去られた存在となりつつあり、自らの存在の維持が困難になったからというのが一番多い理由だそうだ。
僕たちが普段幻想郷で接する皆は…外では忘れられた存在となっている。
「実力もある程度あるようだし…大丈夫そうね。住みたい場所の指定なんかはあるかしら」
「…ん、森の中がいいかな…」
「分かった…そうね、山の中になるけれどいいかしら」
「ええ、大丈夫ですよ」
「後は、こちらに来てからのルールが幾つかあるから覚えておいてね」
「人間は襲ってもいいのか!?」
「そのあたりもちゃんと説明するから落ち着きなさいな」
紫様が三姉妹に説明している間、手持ち無沙汰になったのだが…三姉妹の末っ子がこちらに近づいてきた。
「ん、どうした?」
「…ルールとか、姉さん達が覚えて…私は後で教えてもらうから暇なの」
「ん、そっか」
朽ちかけの縁側を軽く払って、二人で座る。
「…知らない所に行くのは、怖くない?」
「…ん、姉さん達と一緒だから大丈夫」
「そうかい、なら平気かな」
「でも…」
「どうした?」
「…私一人でも、出かけたりしてみて…お友達ができたらいいなって」
「…ふふ、いいね。…幻想郷に住んでいる妖怪だったり…皆、根っこはいい人だから慣れればすぐに仲良くなれるはずだよ」
「…そう?」
「うん。…実は僕、記憶が無くなっていたというか…」
「……?」
「どうも違う世界から迷い込んできた、って言われたけど、皆よくしてくれて…」
「…そうなんだ」
「だから、心配はいらないよ。…あ、そうだ。僕からもお願いしていいかな」
「…何?」
「向こうに行ったら、僕の式神に君達の案内を頼もうと思うんだ。…よかったら、仲良くしてほしいんだけど…」
「…うん、いいよ」
「ありがとう、お願いね」
「クスハ、何してるのー?もう行くってさ!」
「…うん、今行く」
見ると、紫様がスキマを開けて待っていた。
「ふふ、何を話していたのかしら?」
「世間話というか…心配しなくてもいいよと」
「あら、そう。…じゃ、私達も帰りましょうか」




