移動する鉄の箱
家を出てみると、土ではない何かに覆われた…道だろうか。それが左右に広がり…家が連なって何軒も建っている。
人里もそれなりに連なって家が建ってるけど…こっちの家は、どれも見た目が洋風な気がする。
「すごいですね…」
「黄、こっちよ。これに乗って移動するわ」
「これは…?」
「自動車よ。屋敷に置いてた漫画にも出てたでしょ」
「あー…」
そこにあったのは車輪のついた鉄の箱、と表現すればいいのだろうか。
白く塗装されていて…うん、紫様が乗ったらかっこいいだろうなぁ。
「さ、助手席に乗って」
「ここでいいんですか?」
「ええ、いいわよ。さてと…じゃあ行くわよー」
「…おぉ、本当に動いた…」
スムーズに動いていく。
道に出た車はスピードを上げて走り出した。
「とりあえず今日は黄に外界を知ってもらうのが一番の目的だし…観光といきましょうか」
「ありがとうございます、紫様」
「…あ、そうだ。外界に居る間は様付けじゃなくてさんにしといてね。…流石に変に思われるから」
「わかりました…」
うーん…様付けで呼ぶのに慣れてきていたからうっかりしていたら紫様と呼んでしまいそうだ、気をつけなければ…。
「ところで、お酒飲んでませんよね」
紫「昨晩は晩酌もしてないし、飲んでないわ。…そのあたりはちゃんと人間のルールに則っているわよ。飲んで運転して捕まるなんて馬鹿じゃない」
「…流石です、紫様」




