クーと翡翠の鉢植え
「そういえば、黄…だったわね。あなた、どうして紫なんかの従者をしているのよ」
幽香さんはクーを膝の上に乗せたまま、僕の事を聞いてくる。
「あー…幻想入りした直後に助けられたというか…そのまま成り行きで」
「…そう。新聞も見たけれど、確かに…貴方のその力は幻想郷にいる者たちとは全然違うわね。それに、その内包している純粋な魔力の塊…一体なんなの?」
「…僕自身の力についてはまだ調べている最中といいますか。内包している魔力は…実際見てもらった方が早いですね」
…ヴェルを出すとその熱気で向日葵が枯れるかもしれないな。前に屋敷の中で出した時は畳とかが焦げてヴェルごとものすごい怒られた。
「…フラーウム、ミソウ、出てきて」
「はいはーい」
「お呼びですか、主」
「…っ、この魔力、どういう…」
「精霊、です」
「精霊か…なるほどね。魔力の質からして…そっちのちっちゃいのが土で、着物の方が水ね」
「そうだよー。…ん、お姉さんはお花を育ててるの?」
「育てているというか…私の能力で咲かせた、というべきかしらね」
なるほど、「花を操る程度の能力」か。
「そうだったのですね…」
「そっかー…確かに全部の向日葵が安定しすぎていると思ったよ」
「あら、分かるのね」
「土は植物という生命の源でもあるからねー」
「…あら、向こう側の植物は…」
「あぁ、こっちのは能力じゃなくて種からちゃんと育てている方よ。全部能力でやったんじゃ退屈しちゃうし」
「へー…あれ、これちょっと元気ないんじゃないかな」
「数日前の風雨で倒れちゃってから元気が無いのよね。処置はしたんだけど…少し遅かったみたい」
「…幽香さん、私が育てる分は…」
「ん、そっちはまだ芽が出てないわよ。…もう少しかかるわね」
「クー、私が育てる分って?」
「暇だったし…ちょうどいい暇つぶしになるかと思ってこの子ともうひとりに花の育て方を教えてあげようと思ってね。芽が出るまでは鉢植えは家の中に入れてあるのよ。芽が出たら教えてあげようと思ったのだけど」
「…そう」
花を育てるつもりだったのか。…ふむ。
「…幽香さん、僕もやってみていいですか?」
「ん、別に構わないわよ。教えてあげるわ」




