湖底の都
程なくして、底が明るくなってきた。…地底の縦穴もこんな感じだったような。
「…師匠の作った結界だ。相変わらず丈夫だな」
「…すごい」
半球状、いわばドームの形をした結界が、湖の底にあった。その中には…建物などがあるように見える。
「街があったんですか?」
「…いや、違うんだ。街ごと、ここに転移してきたと言った方が正しい」
「街ごと!?」
「幻想郷でも極一部の…そうだな、幻想郷ができた頃から居る妖怪くらいしか知らない場所だ。…さて、中に入ろう」
「え、でも入り口は…」
どこにあるんですか、と聞こうとしたら…虚空さんは手を結界に突っ込み、こじ開けていた。
「力技だった!?」
「何を言う、俺じゃないとできないんだぞ。…維持するのも大変なんだからさっさと入れ」
「は、はぁ…」
湖底の街はなかなか広く、虚空さんが一緒でなければ迷っていたかもしれない。
虚空さんが言う転移してきた頃を考えると、こうやって所々崩れているのも無理はないか。
「…この街とともに、異世界に住んでいた妖怪の王女とその子供のみがここに飛ばされてきたんだ」
「……」
「王女と子供はひどく衰弱していてな。…そんな中、王女は自らの生命力を子供に託したんだ。王女はそのまま息絶えた」
「…子供は、どうなったんですか?」
「生命は維持できた。だが、残りカス程度の王女の生命力でも膨大な妖力でな…」
「…もしかして、封印か何かを…」
「…まぁ、遠くはないな」
街の中心、城の様な建物の中へと入っていく。
「…師匠はその子供がその妖力に耐えられるようになるまで、成長させる方法を選んだ。それが…この繭だ」
玉座の間、その中心。青色に輝く繭がそこにあった。




