人里の眼鏡屋さん
「…ん、だいたい分かったわ。確かに視力が落ちているわね」
「そうですか…」
紅魔館で昼食をとった後、すぐに空間魔法で永遠亭に向かい、検査をしてもらった。
外の世界では広く知られる検査方法で、片目ずつの視力をはかり…
「両目とも0.6ね。大体の人間の正常値は1.0だから…結構落ちてるわ」
「うわー…どうしよう…治す方法は…」
「…一応、治す薬は作ってあるけど…聞いていた生活の仕方だとすぐにまた落ちるわ」
「…うぐ、でも…」
「嫌なら夜に薄暗い中で本を読むのはやめなさい。それだけで今の状態からは悪くなることは殆どないから」
「…でも、今回落ちた分は…」
「…眼鏡という道具があるわ。人里にそれを作る人間がいるから…そこで作ってもらいなさい。紹介状は書いてあげるから」
「…わかりました」
数十分後、僕の姿は人里の眼鏡屋さんにあった。
「いらっしゃい!って妖怪の賢者様の…」
「こんにちは。…実は僕の眼鏡を作って欲しくて…あ、これ紹介状です」
「ふむふむ…?ん、永遠亭で検査したんだね。分かった…枠はどれがいいかな」
案内された所には色とりどりの眼鏡の枠が置かれている。
「…初めてなんでよくわからないんですよね」
「なるほど。…ふむ、君にはこれが似合いそうかな」
眼鏡屋の店主が手に取ったのは黒いシンプルなデザインのものだ。
「最近僕が作ったものなんだ。これからはこのスマートな形の眼鏡が来ると思ってね」
「じゃあ、これで」
「ん、ありがとう。じゃあ早速レンズを取り付けるから待っててね」
言われるがまま座らされ、ぼーっと待つ。隣には尻尾をゆらゆらさせながら退屈そうにしているクーが居た。
と、眼鏡屋に誰かが入ってくる。
「…あれ、店主はいないのかい?」
「あ、すいません。今僕の眼鏡を作っててもらってるんです」
「そうだったか…ん、君は…八雲黄君かな?」
「あ、はい…ええと」
「ああ、自己紹介がまだだったね。僕は森近霖之助。魔法の森の入り口で香霖堂という店をやっているんだ」




