鬼と約束してしまったから
最初の三発がゼロ距離で命中し、大きく吹き飛ばされた後、追撃が三発×十一連。
酔っ払いは黒焦げになって落ちてきた。
「ぐえぇ…」
「頑丈だなぁ、やっぱり鬼だからか」
…ん、なんか視線が怯えている。やりすぎたかな?
「な、なんだあれ…」
「あいつ、鬼の中でもかなり強い方だったよな…」
「素面じゃなかったとはいえ、瞬殺…?」
「主様…!」
クーが駆け寄ってくる。…よしよし。
「怒鳴ってきたのはぶっ飛ばしたからね」
「…うん、でも…」
クーと僕はぐるっと取り巻きを見る。…見られたそばから小さな悲鳴が…
「…ちょっとやりすぎ」
「うん、ごめん」
と、クーのことを預けていた鬼がこちらに近づいてきた。
「いやはや、人間にしてはなかなか強い…というか人間かい、あんた?」
「一応人間、のつもりですけど…」
「…ま、そういうのはいいか。なかなか強いじゃないか、今度手合わせしてほしいね!」
鬼は肩を組んできた。…あれ、この方も酔ってらっしゃる?
「えーと…」
「星熊勇儀だ、よろしくな。あんたは?」
「八雲黄、です」
「八雲?あんた、あのスキマ妖怪の関係者かい?…人間なのに?」
「あ、はい。紫様に拾われまして…従者として住まわせてもらってます」
「へぇ…そうかい。しかし、人間を従者にねぇ…その強さを見抜いていたからこそ、だろうかね。ま、その辺はいいとして…約束、守ってもらうよ」
「…飲むのに付き合う、ですか。…お酒、弱いんですけど…」
「あー、そうなのかい?…うーん、すぐに潰れられても困るしなぁ」
勇儀さんが強すぎて鬼もなかなか付き合ってくれないらしい。…さっきぶっ飛ばした鬼をお仕置きとして突き出せば良かったかな…なんて考えているうちに、店に入っていた。
「おー、勇儀さん。いつものでいいかい?」
「ああ、いいぞ!…黄達はどうする?」
「あー、えーと…」
「…主様、お腹すいた」
「ん、そうか。…定食とかあります?」
「おう、あるぞ。お品書きがあるから、そこから選んでくれ」
…とりあえず食事をすることにしよう。




