絡むならば吹き飛ばす
数分ほど、パルスィさんはクーを撫で続けていた。
「なんでこんなに手触りがいいのよ、妬ましいわ…」
「元々は狼だったんだけど、その時から毛並みがすごい良かったからなぁ」
「……」
撫でられてご満悦のクーだった。
「さて、と。そろそろ行こうか」
「…うん。…また、遊びに来るね」
「別に来る必要は…」
「……」
「う…分かったわよ、また来なさい」
「…えへへ」
クーの上目遣いに完全にやられた様子だった。
「旧都を通る際には前だけじゃなく、横とかも気をつけなさい。酔っ払いにぶつかっていちゃもんつけられるわよ」
「わかりました、ありがとうございます」
クーと手をつないで、橋を渡りきり、旧都の中へと入っていく。
「あれ、そういえばクー…お酒の匂いもう大丈夫なのか?」
「…慣れてきた」
「そっか」
旧都の中はまさにカオスだった。
「あっはっはっは!もっと飲め飲め!!」
「なぁ〜んだてめえ、やるのかぁ!?」
酒盛りによる酒気帯び歩行、ところにより殴り合い。
阿鼻叫喚の光景の中を進んでいく。
「…これは、なかなかだなぁ…潰れる寸前で止まってるし」
「…あうっ」
「ああ、なんだてめえ?ちっこいのがウロウロすんじゃねえよ!」
クーが酔っ払いにぶつかってしまった。酔っ払いの鬼は絡んでくる。
「ちゃんと前見て歩いてたのか、あぁ!?」
「……っ」
「…あまり怒鳴らないでもらえますか、怯えてしまいます」
「…てめえが保護者か?んなところにガキを連れてくんじゃねぇ、よ!」
「っとと…危ないな」
殴りかかってきたので避ける。酔っ払いはもんどりうって倒れた。
「てめえ、ぶっ殺してやる!」
「…はぁ、面倒だな…」
…できればこういう輩の相手をしているのは見せたくないんだけどなぁ。と、女性の鬼がこちらを見ている。
「…すいません、ちょっと…」
「おや、どうした?」
「式神を少し預かってて欲しいんです、少し絡まれまして…見せたくないんですよね」
「…後で、私の酒に付き合ってくれるなら考えないでもないよ」
「わかりました…助かります。クー、お姉さんの所でじっとしててね」
「……」
クーはあの鬼に絡まれたのがよほど嫌だったらしく、すぐに隠れた。
「…逃げんじゃ、ねえっ!」
「ああもう…」
迫ってくる拳を受け止めると、周りの鬼がどよめいた。
「受け止めたぞ、あいつ!」
「いいぞー、やっちまえー!」
「…うるっさいなあ、もう!」
受け止めた拳をそのまま掴み、上へと投げる。
「うおぉっ!?」
「…俺の式神に手を出した罰だ。燦光『クラスター36』!」
スペルの発動で変形した武器の砲口を押し当て、エネルギーが充填されていく。
「吹っ飛べ、酔っ払い!」
「ぐわぁぁぁぁぁ!?」




