橋姫と式神
仄かに青白く光る鉱石を含んだ土で覆われた道を行くと、その明るさがだんだん変化していった。それは、蝋燭の灯りのような暖かさだ。
「旧都の灯りがこっちまで届いてきているみたいだね」
「…うー…」
「どうした、クー?」
「…お酒の匂い…」
…なるほど、旧都の宴会騒ぎで消費された酒の匂いか。僕はまだわからないけど、鼻がいいクーには辛いだろうな。
「…?水が流れる音…」
「あー…橋に近づいてるもんな」
「…橋?」
「うん、こんな感じで…」
地面にガリガリと簡単な地図を書く。地底を寄り道せずに進むので一本道だ。
「まず、ここがさっき降りてきた穴の底。で、ここが旧都でその先に地霊殿と旧地獄跡。…それで、旧都と穴の間には橋があるんだよ」
「…そうなんだ」
「地底は危ないって言われてたから事前に調べておいたんだよね」
…さて、橋にはあの妖怪がいるはずだ。すんなり通してもらえるといいんだけど。
大きな橋がかかっている。…その真ん中に、水橋パルスィが立っていた。
「…また変なのが来たわね」
「変なのって…」
「人間がここに来ること自体が変なのよ」
パルスィさんはじっとこちらを睨んでいる。
と、クーがパルスィさんに近づいていった。
「…通っちゃ、だめ?」
「なんで通さなきゃいけないのよ、あんたらみたいなのを」
「…だめ?」
「…そ、その目をやめなさい」
…ああ、上目遣い攻撃されてるのか。こっちからだとクーの後ろ姿しか見えないが、パルスィさんはタジタジだ。
ちなみに紫様も藍様も僕もあの上目遣いにやられておやつとかを買ってしまっている。
「………」
「…う、うぅ、分かったから…その純粋な目をやめなさい、妬ましいわ!」
「…えへへ、ありがとう」
パァァァ、という効果音が聞こえる気がする。にっこり笑顔か。
「妬みの欠片もないなんて、私の天敵じゃないのよ…」
「いや、僕が猫撫でてたりすると嫉妬の目を向けてくるけど」
「…だって、主様に撫でられるの羨ましいから…」
「…あ、確かに妬みを感じるわ。いい妬みよ」
パルスィさんがクーを撫でている。…尻尾振っちゃってるよ。
「…えへへ」
「撫でたら妬みが消えちゃったわ…」
「撫でられるの好きだからなぁ」




