観察する土蜘蛛
中間地点から少し降りたところ。
キスメは桶ごとクーの腕の中に収まっていた。
「…そろそろ、いるはず」
「おやおや、キスメ、捕まったのかい?」
逆さになった状態で降りてくる一人の女性。黒谷ヤマメだ。
「…こんにちは」
「こんにちは。また可愛らしいお嬢さんと…おや、君は…八雲黄かい?」
「はい、そうですけど…何故僕の名前を」
「この前、新聞が落っこちてきてね。外来人がスキマ妖怪の従者になったって書いてあったから気になっててね。…ふーん…」
僕の周りを一周しながら観察してくる。
クーはじっと見られて恥ずかしそうだ。
「…外見は普通の人間みたいだけど、中身は完全に別物なんだねぇ。…そのあたりの記憶も全然無いのかい?」
「殆ど思い出せないですね…紫様も僕に関する手がかりを捜してくれているんですけど、見つからないみたいで…」
「そうなんだ…ま、うじうじ考えるよりも行動した方がいいね!」
元気だなぁ…
「で、地底に何の用なのかな?」
「僕の探しているものの反応がどうやら地底からしているみたいなんです。なので探索と…いい機会なので地底を一回見てみようかと思いまして」
「そうかいそうかい、旧都の酔っ払い鬼には気をつけるんだよー?」
「ええ、分かってます」
「ふふ、わかってるならいいんだよ」
話をしつつ、ヤマメはクーからキスメを受け取る。
「さてと、そろそろ着くよ。ほら、見てごらん」
「…壁が淡く光ってる?」
「…綺麗」
「へー、発光する鉱石が含まれてるんだねぇ」
「うわっ、どこから出てきたのさこの子!?」
いつの間にかフラーウムが出てきていた。小人サイズで、僕の頭の上に乗っている。
「あー…フラーウムは精霊で、僕の探し物はフラーウムの仲間なんですよ」
「そ、そっか…驚いちゃったよ」
穴の底に着地し、クーを肩からおろす。…踏んだ部分が強く発光しているな。
…右側に、赤い灯りが見える。
「このまま進むと旧都で、そこを抜けて道なりに進めば…地霊殿に着くよ」
「ありがとうございます、ヤマメさん」
「いいのいいの、じゃあまたねー」




