強制休養
「…げほっ」
「主様、ごめんなさい…」
「まったく、式神に占領されてるからってあんな眠り方するからよ」
はい、見事に翌日体調が悪くなってました。風邪なのか…
「私たちのせいで…ごめんなさい!」
「いいのいいの…けほっ」
クーと橙がずっと頭を下げ続けていたので、撫でてやる。…ああ、腕もだるいな。
「うつしちゃうと悪いから、もう部屋の外に出てなよ…?」
「…まぁ、妖怪だから殆どうつらないとは思うけれどね。…一応、しっかり休ませないといけないから、出てなさい」
「…はい」
クーと橙はしょんぼりした様子で部屋から出た。
紫様と僕の二人が部屋に残される。
「…まったく。式に気を使う必要なんで無いのよ?」
「…二人が、あまりに気持ち良さそうに寝てたんで起こしたくなくて…」
「…はぁ」
頭を抱えて呆れる紫様だった。
「…起きてから説教しようと思ったら、これなんだもの。クーが涙目で『主様が変なの!』ってこっちに来たのよ?」
「…はい」
「…式に心配させないようにするのも主としてするべきことよ」
「そうですね…けほっ」
「…ま、今回は許しておいてあげるわ」
そう言うと、紫様は布団に入ってきた。
「…何してるんですか」
「…風邪なんだから、暖めておかないといけないでしょ。…藍が体調を崩した時も、私がこうやってしてあげるのよ」
優しく撫でられる。僕は紫様に背を向けているので、紫様の表情は分からない。
「…まったく、手のかかる従者ね」
「…ごめんなさい」
その日、一日中紫様に撫でられながらゆっくりと過ごすことになった。




