зелёный
「…うぐぐ、また失神した…せっかく『聖域の顎』がノーリスクで使えるようになったと思ったのに…」
「仕方ないねー。なんか…また違う力が発現したっぽいから」
起きた場所は守矢神社でも、永遠亭でも、ましてや紫様の屋敷でもない。今まで入ったことの無い建物だ。…やけに広いが、どこなんだろう。
枕元には、フラーウムとメラン、ビヤンコと…見覚えの無い人物が二人。
一人は、天狗装束で、長い黒髪が艶やかな美人だ。文さんの上司、天狗の上層部の方かな…?
もう一人は、緑色のローブを着ている少年。手には片手で扱えるサイズの杖が握られている。…彼から感じる魔力を僕の内側からも感じるということは。
「君が緑の精霊玉に入っていた精霊ってことか」
「ええ。僕の名前はジリョーヌイ、風の精霊です。新たなマスターよ、お久しぶりですね」
「ああ、やっぱりそういう風になるのね…」
「はい。…我々はもともと、マスターと共にあるべき存在なのですから」
「…主様、どうやらこの儂らを含む八精霊は、主様とワンセットになって何かを成し遂げるべき存在だったらしいのですぞ」
ビヤンコ達も、ジリョーヌイに言われてそれを思い出したらしい。
「…作り物の身体に、作り物の精霊を閉じ込めてワンセットか。…でも、あの力はなんなんだろうな…」
「全く、山全体が震えておったぞ。肝を冷やしたわい」
「…えーと…」
「おぉ、自己紹介がまだじゃったな、山の救世主よ。儂は大天狗、妖怪の山の天狗連中をまとめておる」
喋り方がなんだか豪胆おばあちゃんなんだけど…
「なんか失礼なことを考えおったな、このこの」
両の手を拳骨にして、頭の両側をグリグリやられた。
「いたたた、違いますから!」
「冗談じゃ。…しかし、アレじゃのう…本当に助かったわい。感謝してもしきれんが…まずは、礼を言う。ありがとう、君がいなければ儂の部下にどれだけの被害があったか…」
「…いえ、あれは…僕が処理するべき、というか僕じゃないと処理できない類のものなので…」
「それはあのスキマ妖怪から聞いたわい。…冗談だと思っておったが…実際に被害にあってしまったからのう。今後は妖怪の山を統治する者として、協力を約束しよう」
「ありがとうございます」
握手を交わした所で、紫様が部屋に入ってきて…
「黄、目が覚めたのねよかった!」
「ぐへっ!?…ゆ、紫様苦しい…」
飛びつかれて抱き締められた。…というか、首が…
「ほれほれ、加減を間違っとるぞ」
「あっ、ごめん黄…」
「けほけほ、心配をかけさせてしまってこちらこそすいません…」
「…しかし、なかなか大事になったわね今回は。…一応異変として解決しておかないと人間側の不安が取り除けないわ」
「それならその処理は…そうじゃな、文に頼むとしようか」
「…新聞ですね」
「わかった、じゃあ任せるわ。記事が完成した時にまた伝えて」
「おう、では儂は一度席を外そう。部下たちの様子を見てくるからの」
…確かに、あの様子は人里からでも確認できただろう。
「霊夢も飛び出そうとしてて止めるの大変だったんだから。…霊夢が解決する異変とはまた別のベクトルだから」
「…ああ、瘴気の獣はスペルカードルールを無視する存在ですからね…」
「それに、霊夢に祓いの技量があったとしても防げないものだからね。…それと、確認したいことがあるのだけれど」
「はい…僕の新しいスペルとして出てきた…これですか」
スペルカードを取り出し、眺める。
「解放『ユグドラシル・ブラッド』、ね…ユグドラシル…世界樹の事ね」
「…また図書館で調べなきゃいけないですね。パチュリーさんにビヤンコとジリョーヌイを見せに行かなきゃいけませんし」
「そうね…ま、とりあえず今日はゆっくり休んでなさい。私と藍も今から後処理で忙しいから、今はここでね」
「はい」




