Yggdrasil blood
「…グォォォ…」
球状に渦巻く黒い風の中心、そこに元凶が居た。
「ここまで大騒ぎになっちゃったからな…さっさと倒さないとっ!?」
渦の中心から杭のようなものが放たれる。武器で防いで…っ!
「あぁっ…!」
籠手の形状にしたのが間違いだった。手を貫通してしまった!
「く、うぅ…っ、治癒しない…、瘴気か!」
なんとか引っこ抜いたが、既に相手の姿が無い。
「しまった、どこに…が、ぁぁぁっ!?」
背中の至る所に痛みが走る。先程の杭を撃ち込まれたか!?
「ぐ、ぁっ…はぁ、はぁ…」
敵は高速で動き回り、杭を撃ってくる。
少しずつ身体を削られてきて、意識が朦朧としてきた…。
「このままじゃ、まずい、な…っ!」
なんとか立ち上がろうとして踏ん張る脚に、杭が撃ち込まれる。
「あ、ぁっ…ぐ、はっ!!」
…打つ手が、無いか…そう思った時だった。
身体の内側に力強い鼓動を感じた。
「…これ、は…?」
最初の獣を喰ったスペルを作った時と同じように、言葉が浮かぶ。
「これに…賭けるしかないか…!解放『ユグドラシル・ブラッド』!」
血が、力が、身体中を駆け巡り、傷が急速に癒えていく。BW・ヴァリアブルも変化していく。
大鎌の形になり、刃となった白の部分、柄となった黒の部分に、淡い緑色の光が血管のように張り巡らされていた。
周辺の自然から、力をもらっているような…そんな感触だ。
「…見える。今なら…」
黒い渦を目で追えるようになった。おそらく、身体能力も上がって…追いつける!
空を駆け、地を掠めるように下から上へ薙ぎ払う。
渦は、真っ二つに斬れて霧散し、獣の姿も無くなっていた。後には、緑色の精霊玉が転がっている。
「…これで、四つ…っ、く…ぁ…」




