麓にて、烏天狗と
人里を出て道なりに進み、麓まで着いた。一応土が見える道が参道だということが立ててある木の板に記されている。
(…既になーんか監視されてるなぁ。嫌な視線を幾つも感じる)
山の中からの視線は恐らくこの妖怪の山を根城としている天狗たちの中でも警戒にあたっている哨戒のものだろう。
「入りづらいなぁ」
「おやおや、スキマ妖怪の従者でもやっぱりビビったりするんですねぇ」
「そりゃ、これだけの視線を感じるならね…って、いつの間に後ろに居たんですか文さん」
「立て札を読んでいる物好きな人が居たので近寄ってみたら貴方だったんですよ。…山に何か用があるんですか?」
ペンと使い古した手帳を持ちながら、興味深そうにこちらを見てくる。でも、目の奥はあまり居心地のいい光は宿していない。
「前の宴会の時に、一度来てみたらと早苗さん達に誘われてたんですよ。山登りをする体力も十分についたと思ったのでそろそろ行こうかなと」
「なるほど、そうでしたか。…山についてはちゃんと調べたようですね」
「空から行ったら撃ち落とされるかもと言われたりしてたんですよ。だからこそこの参道を歩いて神社に向かうんです」
「…意外としっかり調べているんですねぇ」
ペンと手帳をしまい、微笑みかけてくる。目の奥もちゃんと笑っているようだ。
「じゃ、とりあえず僕は失礼して、」
「ああ、待ってください。私も同行します」
「え?」
「今日は本当はお仕事だったりするんですけどー…見張りって暇なんですよね。だから、山に入った貴方を見張る名目でいろいろ暇つぶしでもしようかなーと思いまして」
「なるほど…」
…文さんもこの妖怪の山の天狗で、天狗内の縦社会に組み込まれている。…彼女が居た方が安全に行動できるかもしれない。
「わかりました、一緒に行きましょう」
「ふふ、話が分かるようで助かります。それでは行きましょう」




