人形師
人里から山に向かう道に出ようとしたのだが、人だかりができていたのでその中心を見てみると…人形劇をやっていた。
「勇者は、お姫様を無事に助けて、王様の所まで送り届けました」
演じている物語はよくあるような勇者が悪に攫われた姫を助けに行くものだったようだ。…あれ、前の方にクーと橙が居るな。やっぱりこういう物語には憧れるのかな?
人形の動きはとても滑らかで、顔がデフォルメされていなければとても小さな人間としか思えないような動き方をしている。
「王の元に戻った勇者は褒美として城の住人の一員として迎えられ、その後お姫様と結婚。二人は幸せに暮らしましたとさ。おしまい」
パチパチと拍手が起こる。
…最初から見てみたかったな。
「次回は…そうね。一週間後にまた来るから、楽しみにしててね」
「「はーい!!」」
人形劇の演者は、一体の人形を除いて箱にしまい、次の上演の日を伝えていた。
「…あら、あなたは。最近噂の従者さんじゃないの」
「あ、どうも。えーと…アリス・マーガトロイドさんですよね」
「ええ、アリスでいいわ。…それと、あなたは二回目ね」
「…こんにちは」
クーがいつの間にか隣に来ていた。
「ん、もう知り合いだったのか。僕の式神のクーだよ」
「なるほどね…だからあの子と一緒だったのね」
「ああ、橙か。一緒に遊ぶんじゃなかったのか?」
「主様が居たから何かなと思って。…じゃ、行くね」
「おう、行ってきな」
クーは人里の出口…湖方面へと駆けていった。
「いい子ね」
「自慢の式神ですよ。そういえば、人形劇の時は魔法糸は使わないんですね」
「子供達がやってみたいって言ってたんだけど、私の方法だと無理だから…普通の人形でやるようにしたのよ」
「なるほど…」
「…じゃ、私はそろそろ戻らなきゃ。何か用がある時は私の家…魔法の森にあるから気軽に訪ねてきていいわ。…あ、でも魔理沙は連れてこないでね」
「ん、仲が悪いんでしたっけ?」
「…いや、魔理沙が来る度にお菓子を食い散らかすから…」
「あー…分かりました、気をつけておきます」
「ありがとう。それじゃあまたね」
「はい。今度の人形劇は最初から見ようかと思うんで…」
「ええ、楽しみにしててね」




