眠り
「さてと…もうそろそろ寝ようかな…」
本を閉じ、明かりを落とそうとした時に部屋にクーが入ってきた。
「ん、どうした?」
「……ん」
何も言わずに抱きついてくる。…髪がやたら乱れているな。
「また紫様に捕まったのか…よしよし」
たまに、クーは紫様や藍様に捕まって抱き枕にされる。
藍様の場合は優しく抱き枕にされて、尻尾で包まれてぐっすり眠れるのだが、紫様はかなり強く抱きしめてきて痛い。
「藍様の所に先に行ったの?」
「…今日は、こっちの方が安全…」
…ああ、さっきのも見てたからか。確かにあの後にここに潜り込みに来るのは無理だろうなぁ。
「わかった。布団敷くからちょっと待っててな」
「…手伝う」
布団を敷いて、枕を二つ並べる。
そういえばいつの間にか常に枕が二つになってたっけなぁ。
先に僕が布団に入り、クーが隣に潜り込む。
クーは僕の腕を抱え込むようにして離さない。
「…主様、おやすみなさい」
「おやすみ」
数分もしないうちに、クーは眠りに落ちる。
「…むにゃ…主様…」
「…ん?」
「はふ…それ、もっと食べたいです…」
「…寝言か。どんな夢見てるんだか」
むにゃむにゃと口を動かすクーの頭を優しく撫でてやる。
「…んむ…」
「…さてと、僕もそろそろ寝なきゃな」
目を閉じ、心を落ち着かせる。
程なくして、僕も眠りの世界に旅立った。
翌朝、抱き枕を取られたと勘違いした紫様と一悶着あって、また藍様が怒ることになるのは別の話だったりする。




