時間が余ると
桶に汲んだ水で、ざばざばと靴を洗う。
クーは今回もダメだったと拗ねていた。
「毎回毎回拗ねないでもいいのに…」
「…ずっと勝てないんだもん」
「僕もクーに負けないように鍛えてるからね」
靴を干している間は休憩だ。拗ねつつも持ってきてくれたお茶を、一緒にすする。
「……」
「…主様、どうしたの?」
「ん、いや…なんでもないよ」
クーを膝の上に乗せて、撫でてやる。
「ん…」
「相変わらず手触りがいいなー…可愛いし、自慢の式だよ」
「…ありがと」
こうしていると、狼というよりも犬の方が近い気が…
「…主様、何か失礼な事考えた?」
「いや、なーんにも」
「…むー」
頬をつついてきたので、つつき返す。
むにむに、むにむに。
「やーめーてー」
「そっちこそやめてよー」
「…っ、くく…仲良しだな…」
笑いを堪えながら藍様がこちらに来た。
見られていたのか…。
「クー、おいで」
「…むー、悩む。…主様の上も気持ちいいけど、藍様の尻尾も気持ちいい…」
「ん、じゃあこうしようか」
藍様が隣に座って、尻尾を器用に動かしてクーの前にやっていた。
「…はう…」
「わー、やっぱり藍様の尻尾いいわ…」
「って、黄まで触ってるし…」
「これを知っちゃうとなかなか抜け出せなくなりますから…あれ、尻尾が一本足りない…あ、そっか、紫様が…」
「…たぶん涎垂らされてるみたいだ。なんか濡れた感じがするんだ…」
がっくり項垂れていた。洗った後に乾かすのも大変らしく、前回見た時は橙が拭くのを手伝っていた。
「今日は僕たちも拭くのを手伝いますよ」
「…助かるよ」




