或る日の朝食風景
「紫様、やっと起きて…ぶふっ」
「藍、なんで笑ったか言いなさい」
「いえ、その、あまりにも顔が真っ赤でしたから…」
「…紫様、なんだか可愛い」
「…クーまでそういう事言うのね…」
ゆっくり座布団におろしてあげて、隣に座る。
ぺしぺしと叩かれたけど、気にしないでおこう。
「わざわざ藍が見るようにここまで運んだわね…?」
「何のことですかね….ってででで、脇腹をつねらないで…」
「…紫様、主様を…いじめちゃ、ダメ」
「えー、私はさっきまでいじめられてたのよ?」
「…その割には、嬉しそうだった…」
「うぅ、分かったから…何かいじる方向が似てるわね」
「…そうかな?」
クーは首を傾げて紫様をじっと見ている。
「そうよ…そんなに可愛い可愛いって言われたら調子狂うわ」
「嬉しいかなと思って言ってたんですけどね」
「…からかう気が無いから余計にたちが悪い…」
「そういえば、精霊たちは誰も居ないようだが」
「今日はフラーウムとビヤンコは午前中は永遠亭、メランはいつも通り紅魔館ですよ。ビヤンコは僕の修行に付き合ってもらうので昼にはこっちにも居ると思いますけど」
精霊は基本的に肉体的な疲労は無い。
あまりに分身を作りすぎると精神的な疲れは生じるらしいが、すぐに回復するみたいだ。
「…あ、そうだ。明日そっちに行きますってメランを通して伝えておかないと」
「む、紅魔館に向かうのか?」
「パチュリーさんにビヤンコを見せるのと、光属性の魔法について調べたいので」
「熱心ねぇ…」
「自分が使う力についてはちゃんと知っておきたいので」
「…そう、頑張りなさいな。さてと、食べましょうか」
「そうね、いただきます」
大抵はこの四人か、橙を加えた五人で朝食を取るのが、この屋敷での日課になっていた。




