永遠の暇潰しは
「おーい、鈴仙居るかー」
丸めたコートを抱えて、虚空さんは誰かを呼んだ。程なくして、一人の女性が出てくる。
「はい…って、虚空さん。お久しぶりですね」
「ああ、そうだな。…とりあえず上がっていいか?」
「はい、構いませんけど…今日はコートを脱いでるんですね」
「…中に姫さんが入ってる」
「あー…そういうことですか…」
「あと、客人を連れてきた」
「どうも」
「あ、確か…黄さん、ですよね」
「はい、お使いを頼まれまして」
「わかりました、どうぞ…って」
「…えへへー」
「あんた、何してんのよ…」
鈴仙さんは不機嫌な顔を僕に…正確には、僕に背負われているてゐに向けている。
「ちょっと襲われて、」
「てゐは自業自得だろうが」
「あっさり売られた!?」
「普段の行いが悪いからだろうが…」
「…なぁ、私も一緒に入らないと駄目なのか?」
「…見た目ズタボロなのに何言ってるんですか。…帰り道の案内をお願いしようと思ってたんですけど」
「…なら、仕方ないか…」
客間のような場所に通され、妹紅さんと二人で待つ。
虚空さんは「コートに付いた灰をはらってくる」と言って出てしまった。
「…その、すまんな」
「いえ…しかし、激しい戦いを毎回やってるんですか?」
「死なない私たちからしたら、一種の娯楽みたいなもんだよ」
妹紅さんは服を着替えている。…戦いの後に来る事も少なからずあるらしく、鈴仙さんがすぐに準備してきたみたいだ。
「……」
「…まぁ、最近は…結構穏便なやり方で勝負したりとかしてるけどな」
「例えば?」
「んー…双六だったりとかかな…あいつが暇を潰すために集めたらしいんだ」
「そうなんですか」
「二人でやるのも淋しいから、その時は…さっきの鈴仙だとか、てゐも混ざるんだよな」
「面白そうですね…今度、僕や式神も混ざってやってみたいです」
「やめといた方がいいぞ?ビリになるととんでもない罰ゲームが待ってるし」
「えー…?」
「ふふ、そうねぇ。この前の特製ドリンクの時はもこたん白目むいて倒れたもんねぇ」
唐突に後ろから声がして、振り向くと…元通りに戻った輝夜さんと、コートを羽織った虚空さんが居た。




