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GRANJA  作者: 秋山さくら
第一章 始まりはいつもの日常
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第5話 忘れていた

「ん~…」

「…ずね!…起きろ!ゆずね!」

体が揺れる。気持ち悪い…

「ん~」

とても嫌そうな声を出して、ゆずねは目を覚ました。

「もう!やっと起きた!!」

目を擦りながら顔を上げると、目の前には光がいた。

「おはよ」

紗夜が言うと、おはよーと、呑気にゆずねが答えた。

「おはよーじゃないよ。ずっと寝ていたじゃん。もう昼だよ?」

光に言われて、ゆずねはハッとした。

(あれ、そんなに寝てたっけ?)

教室の時計を見ると、針は11時45分を指していた。

「・・・もう昼ご飯の時間?」

「そうだよ。だいじょうぶ?」

紗夜が心配そうにゆずねの様子を窺う。

「うん…大丈夫!」

「よし。それじゃあ、弁当食べようー」

光はいつの間にか弁当箱を手に持っていた。

「光は食いしん坊だね」

ゆずねが苦笑しながら言うと、紗夜もクスッと笑った。

ムッとしながらも、光は2人を促して弁当を食べ始めた。本当のことだから返す言葉もないようだ。


「あのさ…」

昼食が始まって、しばらくして突然ゆずねが言った。

「ん、どうしたの?」

「昨日、変な夢を見たんだ」

「どんな?」

光は黙々と弁当を食べていたので、紗夜がゆずねの相手をする。

「どんな…って、どう話したらいいのか、分からないんだけど、あんまり良くない夢」

「覚えてないの?」

「うん、なんか・・・あいまいな感じ」

「そっかぁ。夢って、起きてすぐは覚えているつもりでも、いつの間にか忘れていることあるよね」

「それ分かる~!」

興味があるのか、急に光が会話に入ってきた。

「夢って色々あるよね。たまに現実に起こったこととか、これから起こることとか見たりするし…その夢、なんか気味が悪いね」

光はサラリとそんなことを言った。

「う゛…」

それを聞いたゆずねはますます不安になってきた。

「占いの世界では、夢占いっていうのがあるけど、夢の中に出てくるシンボルが分からないと何とも言えないかも」

「へぇ!そんなのがあるんだ」

「確かに、初夢でみるといいっていう、一富士二鷹三茄子とかあるもんね」

ポンッと光がそんなことをいうものだから、後の2人は目をまんまるにして光を見た。

「ひ、光が!!」

「何?」

「まともなことを言った!」

「うっわ、すっごい失礼なんですけど…」

「ご、ごめ~ん!」

へらへらと笑うゆずねを見た光は、謝る気絶対ないでしょ!っと言って、ため息をついた。


キーンコーンカーンコーン


「はい。それでは、今日はここまでにしましょう。号令」

「起立。気をつけ、礼」

今日の最後の授業がようやく終わった。

「ふぅ~終わった~」

ため息をつきながら、ゆずねは椅子に座った。鞄に筆箱を投げ入れ、数学と古典の教科書とノートを詰め込んだ。

今日は宿題が2つもある…

ゆずねの顔が一瞬歪んだ。すぐに顔は元に戻り、鞄を持って後ろを振り向くと光が不思議そうにこちらを見た。

「あれ、帰らないの?」

いつもなら早く帰ろうと光に急かされるのに…

そういえば、今日は何も言われない。

「ゆずね、今日誰かと約束してなかったっけ?」

「…あ゛」

はぁ~と光は大きなため息をつくと、ゆずねの背中を押して、教室のドアの前まで連れていった。

「え、ちょっ!」

「ほれ!」

光はより一層強く押して教室からゆずねを押し出す。

「何するのよー!」

「はいはい、とっとと行って来なさい!すっかりさっぱり忘れていたということは秘密にしておいてあげるから」

「…はい」

あきれながらツラツラと言う光の横で紗夜が手を振って、また明日ねと言った。ゆずねも手を振って、また明日ねと言い、2人とはどこで別れた。そして、足早に2-3へ向かった。


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