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GRANJA  作者: 秋山さくら
第一章 始まりはいつもの日常
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第3話 変化の兆し

こうして、無事、始業式は終わり、午前中で学校が終了したため、ゆずねと紗夜と光の3人は帰りにカフェに行くことになった。

チリンチリーンーー

ゆずねがドアを押して開くと音が鳴り、店員が寄ってきた。

「いらっしゃいませ、何名様ですか?」

「3人」

光は指3本立てて、店員に言った。店員がニコッとほほ笑み席へ案内する。

「かしこまりました。こちらへどうぞ」

店内には3人以外にも何人か制服を着た生徒がおり、生徒の溜まり場となっていた。3人は店員に案内され席についた。

「私、ここに来るの初めて」

「うそ!?まじで?」

「うん、紗夜は?」

「来たことあるよ」

私だけ?とゆずねは驚いた。その様子を横目で見て紗夜はほほ笑んだ。

「ん~と、ここはカフェモカがおすすめかな」

紗夜がそう言うと

「私は苺のミニタルトが好きだよ」

光もおすすめの物を教えてくれた。

「どっちも美味しそう・・・」

しばらく、ゆずねは光と紗夜にあれもこれもと勧められて注文するものをどれにしようか悩んだ。

「ん~これ、美味しい!」

「でしょ?」

「こっちも食べてみて!」

「!!」

「美味しいでしょー」

「うん!美味しい」

結局、ゆずねはカフェモカと苺のミニタルトを注文した。紗夜はカフェモカとチーズケーキ。光はショコラとコーヒーをそれぞれ注文した。ゆずねが夢中になってケーキを食べていると光が飲んでいたコーヒーカップを机に置き、話し出した。

「そういえば、担任、あの女の先生になったね」

「うん、あの綺麗な先生ね」

「名前なんだっけ?」

「失礼でしょう?荒川先生よ。荒川桃先生」

光と紗夜が話しているのを聞きながら、ゆずねはカフェモカをゆっくりと味わっていた。ケーキは綺麗に完食。

「荒川先生って結婚しているのかな?」

「ん~どうだろう?指輪はしてなかったと思うけど・・・」

「・・・そうな・・・だ。・・・でもさ・・・」


―――――あれ?


2人の会話が遠のいていく。そんな気がしたかと思うと、瞬きをした次の瞬間。ゆずねは広い広い草原にいた。これは夢なのかと思い、頬をつねってもただただヒリヒリと痛むだけで何も変わらない。口の中にはまだカフェモカの味が広がっている。

「な、何?」

空を見ると真上はほとんど黒のような濃い青色でそこから視線を下へ下げていくと色は薄くなり、一番下はほんのり赤色だった。ビュンと強い風がきゅうに吹き、ゆずねはよろめいた。

「いっ!」

足に痛みを感じ、自分の足下を見るとさっきまではいていたはずの新品のローファーではなく、靴下もはいていない、裸足だった。よく見ると、見たこともない白いワンピースのようなものを着ており、足や手は泥まみれだった。


「寒い・・・」

ゆずねは身を震わせながら風をよける場所を探そうと歩きだした。少し歩くと明かりが見えてきた。薄暗い中で、その小さな明かりはゆらゆらと光っていた。頭がズキズキと痛む。

「ーーゆずね?ーーゆずね?」

また、意識が遠のきだした。誰かが呼んでいる。

「呼んでいるの?」

ゆずねが呟くと、光に包まれたように目の前が真っ白になった。思わず目を瞑る。

「ゆ・ず・ね!!」

「ゆず!!」

頭が揺れる。右肩が暖かい。目をゆっくりと開けると、目の前には心配そうにこちらを見る紗夜がいた。右側には私の肩に手を置いてこちらをのぞき込む光がいた。

「あ、やっと起きた!」

「大丈夫?」

「え・・・あ、うん」

まだ頭が揺れているようだった。痛みは消えていた。

「うそ言え~!チョォーーーップ!!」

バシッ

光のチョップがみごとにゆずねの頭にヒットした。

「・・・いったぁーーー!」

1秒遅れてゆずねが悲鳴をあげた。

「ちょっと光!!やりすぎだよ・・・ゆず大丈夫?」

紗夜が心配している。

「痛いよ~」

「ごめん、ごめん、元気になった?」

「なるわけないっ!」

でも、いつの間にか・・・頭が揺れるような感覚はなくなっていた。だからと言って、光にありがとうなんて言えない。

「ごめんってば!」

「もうー知らないー!チョォーーーップ!!」

「はっ・・・させるか!白刃取りっ」

見事に光の白刃取りは失敗し、光の頭にゆずねの手が勢いよく振り降ろされた。その様子を見ていた紗夜が思わず吹き出した。

「っぷはははは!」

急に笑い出した紗夜に2人は驚きつつも、なんだかおかしくなってきたので2人も紗夜につられて笑い出した。

「痛いじゃん!」

「ごめん!」


そう言いつつも、ゆずねは心の中でありがと、と呟いた。すっかり仲直りした2人と紗夜はカフェを後にした。3人がいなくなったカフェでは、残っている生徒たちの笑い声で店内が満たされていた。

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