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GRANJA  作者: 秋山さくら
第二章 新世界
14/15

第12話 竜(ドラゴン)と出会う




な、に―――?





轟音が聞こえた後、すぐに強い衝撃がゆずねを襲った。とっさに手に触れたものを掴む。腕がちぎれるかと思うぐらい引っ張られた。強い風が吹く中、なんとか目を開いて周りの状況を確認する。


友が何かを叫んでいた。


目を凝らして、何を言っているか読みとろうと集中した時だった。今度は風に煽られて、体がふわふわと浮き沈みしだした。



「――ッ!!」



そろそろ手が腕が限界だった。もう駄目、と思ったとき、手に温かさが・・・



「今上げるぞ!」



友だ・・・友の声だ!



友に引っ張り上げてもらい、何とか上まで上りきることができた。



「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」



目にジワリと涙が浮かぶ。



「おい、大丈夫か?」

「だ、大丈夫なわけないじゃん!」



心配そうに顔をのぞき込んできた友に叫んでやった。全身の力が一気に抜ける。



「初めてにしてはよくやったよ。お前根性あるな」



ルナが笑いながら言う。



「笑わないでよ。死ぬかと思ったんだから・・・」



ゆずねは肩を落として、息を吐く。だいぶ呼吸も落ち着いてきたので、顔を上げて辺りを見回した。



「え・・・、これ何なの?」

「悪いな。こいつは寝るときと食事のとき以外は止まれないんだ」



友はその場にゆっくりと座りあぐらを掻いた。そして、座っているところをポンポンと叩いた。それを見たゆずねは友と同じように座るところを撫でた。



「・・・ふわふわしてる、・・・あったかい」



生きているの?とゆずねが首を傾げながら聞く。




「あぁ、生きている。ちかもただの生き物じゃない。こいつは竜だ」

「りゅ、竜?」



もう一度触ってふわふわを確かめる。そしてゆっくりと立ち上がり、この生き物の全体像を確かめる。



「友。私には牛にしか見えないんだけど・・・」

「いや、牛じゃなくて竜だって」



ルナがそういうと、でも見て、牛だよ!とゆずねがバシバシと叩きながら叫ぶ。





ンモモモモモーーーー!!!



突然、鳴き声を上げる。




「よしよし」


友が竜の頭の方へ移動し、首に座ると頭をなでた。そして、振り返ってゆずねに言う。



「こいつは牛竜(カウスドラゴン)風の力で走り続けている。見てみろ」



友に言われるまま、友の指さす方を見る。



「わー!」



景色がすごい早さで流れていく。まるで新幹線に乗っているよう・・・。いや、それ以上の早さだった。



「こいつに乗るときは、さっきみたいに前を通り過ぎるときに体の横にしがみついて上るのが一般的だ」

「い、一般的って・・・。まさかこれがこっちの世界の普通の乗り物!?」

「いや、これは緊急用。急いでいるときに乗る」

「普段はみんな馬に乗るだろ」



ルナが当たり前だろうと言う。ムッとしつつも、よかったと安堵した。毎回こんなのにのるのは勘弁して欲しいもの。



「それにしても、この子、やっぱり牛だよね」

「まだいうか?」



友があきれたという顔で続ける。



「まぁ、確かに俺たちの世界では牛が一番よく似た生き物かもな」



似てるもなにも・・・

牛が大きくなっただけじゃん・・・



「あんまり牛、牛っていうと失礼だからやめろよ」

「え?」



友は立ち上がり、ゆずねたちの方へ戻ってくる。



「こいつは竜だ。この世界・・・。あぁ、そういえばまだ言っていなかったな。こっちの世界はGRANJA(グランジャ)というんだが、GRANJAでは竜が尊敬され、とても大切にされているんだ。それには竜自体に不思議な力があること、竜を神の使いとする信仰があることが理由としてある。だから侮辱すると後で痛い目をみることになることがある。覚えとけ」


「・・・うん。分かった」



そう返事をしながら、ゆずねは友の言動に違和感を覚えて、頭を捻った。


友の言うとおり、世界が違えば信仰も生き物も、人々の生活そのものが違ってくるっていうのは理解できるし、これから私は学んでいかないといけないと思う。





でも、友・・・



友は私と一緒に向こうの世界から来たんだよね?



なんで、こんなにこの世界のことを知っているの?





どうしてなのか、聞いてもいいことなの?



それとも待っていた方がいい、の・・・?





ゆずねは自然と視線を友に移す。友は視線に気づき、どうした?と首を傾げた。



「ううん」



何でもないよ、ゆずねはそういって目をそらした。










「あ―――!!」



急にゆずねが上に向かって叫び、牛竜の背中に仰向けに倒れた。



「おい、どうした!?」



慌ててかけよる2人にゆずねは言う。



「なんか色んなことがありすぎて、頭がパンクしそう」



吹っ切れたように笑うゆずねにルナが笑い返しながら言う。



「それが普通の反応だって」





友は心配して損したと呆れながらを息を吐いた。その様子を見たゆずねはごめん、と苦笑いしたあと横になった。




あったかくて、気持ちいい。



牛竜の背中は暖かくて、地面を蹴る振動が意外に心地よかった。眠気におそわれたゆずねはそのまま目を閉じて、夢の中に落ちていった。








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