第11話 平行世界?
「ふぅ~・・・」
友は気合いを入れるように息を長く吐くと淡々と話し出した。
「さっきも言ったように、ここは俺たちが住んでいた地球ではない」
「地球ではない?・・・別の星ってこと?」
「いや・・・場所は確かに地球なのだが・・・」
「ん?ここは地球なの?」
ゆずねは首を傾げる。
「俺たちの住んでいた地球とは違う平行世界っていったら分かるか?」
「平行世界・・・?」
ゆずねはそれを聞いて黙り込んだ。友とルナはそれを見守った。数秒後、ゆずねが口を開く。
「つまり、私たちがさっきまでいた世界は今もどこか別の場所にあるということ?」
「・・・そうだ。俺たちの住んでいた家も通っていた学校も今も別の空間にちゃんと存在している。ゆずねの友達も、普段通り存在している」
「どうした?」
「うん・・・」
ゆずねはまだ納得しきっていない表情をしていた。それを見たルナが落ちていた枝を拾い、地面に何かを書き出した。
「こうすると分かりやすいかもな」
「・・・?」
ゆずねと友はルナの描いたものをのぞき込んだ。
「ここが俺たちがいる空間だとする」
ルナはトントンと地面を叩く。
「今から1時間、時間が経つと、こう時間が流れるだろう?」
叩いたところ、現在点から右に向かって一本の線を引き、その先に矢印を書いた。
「うん、それで?」
「で、平行世界がこの線だとする」
ルナは先ほど引いた線の上にもう一本同じように線を引いた。
「この線は俺たちがもともといた空間な」
「うん」
「この上側の線から俺らは下の現在点に移動してきたというわけだ」
「ふむふむ・・・」
「ふむふむって・・・。本当に分かってる?」
「理解はできるよ。でも、実感が無さすぎて・・・あはは」
「お前なぁ~」
ルナがもう一度、先ほどより詳細に解説をしようとした時だった。
「シッ・・・!」
友が急に静かにするように合図した。2人は不思議に思いながらも口を押さえて頷いた。
「・・・何かくる・・・」
友が囁くように言う。体勢を低くしたまま大きな岩に体をぴたりと付け、慎重に様子をうかがう。
「・・・チッ」
確認した後、友は舌打ちする。頭を掻きながら2人の方へ戻ってきた。
「友、どうしたの?」
ゆずねが友の行動を不審に思って聞いたとき、遠くから・・・
パカパカパカ―――
軽快に地面を蹴る音が聞こえてきた。
「ん?」
(なんだろう・・・?馬?)
ゆずねはその音を聞いて、RPGゲームによくある馬に乗った役人だとか、剣士だとか、そういったものを思い浮かべた。
(いや、もしかしたら・・・王子様とか!?)
心躍らせながら近寄ってくる音に耳を傾けた。
「あ・・・もしかして、きたのか?」
ルナが思い出したように友に言う。
「あぁ、きた」
「え、きたって?」
(王子様・・・?騎士隊・・・?それとも護衛隊とかっ!?)
「取りあえず、乗せてもらうか・・・」
そう言って、友は手を横に出した。ルナも同じような格好をする。
「ゆずね、こい」
「へ?」
言われるがままにゆずねは友のところへ歩いていく。
「絶対にあっても離すなよ」
そう言って、友はゆずねの手を握り体を引き寄せた。
「な、何?」
「いいから!俺の真似をして、手を横に出しておけよ」
「う、うん・・・」
友はゆずねの腰をしっかりと抱えた。
「友・・・何が起こるの?」
「黙ってないと、舌噛むぞ?」
友はそう言って楽しそうに笑った。そのすぐ後にルナが叫んだ。
「来た!5,4,3,2,ーー」
ルナの最後のカウントは轟音によってかき消された。