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GRANJA  作者: 秋山さくら
第一章 始まりはいつもの日常
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第1話 はじまりの朝

―チュンチュン―


朝、小鳥のさえずりで目が覚める。ふと窓を見上げると、カーテン越しにうっすらと光が透けている。

「う~ん…」

なにげなく枕元の目覚まし時計に目をやった。短針は7、長針は8の数字をちょうど過ぎたところを指している。

「ひっ7時40分!?」

時計を見て飛び跳ねた少女の頭は寝癖でボサボサだった。まだ起きていない頭をフル活動させて少女は考える。7時40分ってことは、学校まで15分かかって、8時から学校が始まって、え~と、だから・・・

「ち、遅刻ーー!!」

顔を真っ青にして叫ぶ少女の名前は、桜坂ゆずね。今日から高校2年生。ゆずねはベットから降りて、鏡の前でなかなか根性のある寝癖と格闘していた。

(なんで時間がないときに限って寝癖が付くの!)

女子高校生は急いでいても身だしなみに気を使わないといけないので大変である。

「あ~もうっ!」

ワックスをつけてなんとかしようとするがどうにも上手くいかない。にっちもさっちもいかなくなって唸っていると、誰かが階段を昇ってくる音がした。


―パタパタパタ―


それは普段から聞き慣れているスリッパの音だった。音はゆずねの部屋の前で止まり、ほぼ同時に優しそうな声が聞こえてきた。普段から聞き慣れている優しい声。

「ゆず~?何をそんなに急いでいるの?」

「あ、お母さん?ドア開けてもいいよ」

そう言ってゆずねは立ち上がり、ドアを開けた。そこに居たのはにっこりと微笑んだゆずねのお母さんだった。少しウエーブのかかった長めの髪。茶色の髪に茶色の瞳。世に言う理想のお母さんといった感じである。

「あ…そうそう、なんでそんなに慌てているの?まだ6時過ぎよ。みんな起きちゃうわよ」

「…………え?」

少し間を空けてゆずねが答える。

「今なんて…?」

「ん?みんな起きちゃうわよ~って…?」

ゆずね母は不思議そうに答えた。

「その前っ…前だよ!」

「え~と…6時過ぎかな?」

「そう、それっ!…ってまじで!?」

「ま・じ・で♪」

なぜか人差し指を立てて言うゆずね母。それから、驚いているゆずねの横を通りベッドの横まで歩いていく。そして、目覚まし時計を手に取り、ゆずねに見せながら言った。

「あら!この目覚まし時計、ずれてるわよ」

ニコッと満面の笑顔で母は言った。

(くそう…何があら!だよっ。なんでこの人はこんなにも楽しそうなんだ)

「ニコッじゃないでしょ」

「ん?なんで怒ってるの?」

「うぅ…なんでもないよ」

「よかったじゃない遅刻しないですむでしょ」

「まぁ…そうなんだけどね」

(なんとなく納得いかないけど…今までお母さんに勝てたことないし、色んな意味で)

「まぁ、遅刻しないし…いっか!」

―桜坂 ゆずね 17歳、性格は、前向きで小さいことは気にしない―

「じゃあ、母さんは朝ごはんの準備しに行くね~」

そう言って母は持っていた目覚まし時計を元の場所に戻し、あけっぱなしのドアのところに歩いていった。そして、ドアの前で振り返りながら思い出したように言った。

「そうそう、着替えて終わったら友ちゃんと良ちゃん起こして、降りてきてね」

キーッ、バタンッ

ゆずね母はドアを閉めて下へ降りていった。

「お母さん、朝から元気だよなー」

ゆずねは中途半端になっていた着替えを再開した。






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