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1回戦

短くなりましたが、デジャブがあるかもしれません。

 ――もし、一つだけ無人島に持っていけるとしたら。みなは何と答えるだろうか。

 カケルが叫ぶ。

 「バーベキューセット! 何故なら、いつでもおいしいお肉が食べ放題! 」

 「ぼ、ぼくは植物図鑑かなぁ……。無難に、危険の有無も分かるし」

 「いや、参考書だろ! 一日でも勉強が遅れたらどうするんだ! 」

 ――説明しよう。第一回戦、対戦相手は白石高校。お題は、もし、一つだけ無人島に持っていけるなら何を選ぶか。

 第一早々に声を発したのは我が部のムードメーカ、カケル。彼も時折、ケンジに劣らずして奇妙な思考を有する。

 向かいの席、目前にある机を含めて、机は二つ。その長机に沿って、各校の選手が並んで椅子に腰掛けている。

 広大なホールの最前列、ステージ上に、観客席側から、ケンジ、カケル、スバル、マモルが席をなしている。

 ――てか、一つしか持っていけないのに、BBQセットだけ持ち込んでどうすんだよっ!

 ケンジが心の中で正論を吐く。

 「僕は食料だと思うな~。ほら、食べ物ないとスバルちゃん。困るでしょ? 」

 マモルの優しさ。はさておき、他校の生徒も負けずと発言する。

 「ナイフよ。ナイフがあれば、木を切ったり、いかだ作るなり色々できるもの! 」

 「いぃや、釣竿だろ。食料を無難に獲得できるんだぞ。」

 釣竿……か。確かに、、閉鎖された環境のなか魚を釣れば。。。。いや、火がないな・・・・・・。

 「釣竿だけの場合、火がないぞ! 」

 「うぅっ」

 などと、意見が飛び交う。

 今までも、見てきたが審査されるのは真っ当な正論だけじゃない。

 予想を逸していて、なおかつ、みんなを納得させることができる回答。そんな考えを述べることが、この討論会の醍醐味、だと言えよう。

 ――例えばこんな風に。

 「……ぅよ、・・・・・・ゅうよ・・・・・・銃よ! 」

 華奢な体に押され、椅子が後ずさり、彼女が叩きつけた机により、音が生じ注目をもぎとる。

 そこにすかさず、

 「まぁまぁ、落ち着いて、スバルちゃん。ほら、まず理由。理由を聞かせてよ。」

 笑顔を浮かべ、なだめるマモルに対してスバルが首を立てに振った。

 それから、沈黙の中、一間おき、彼女が喋った。

 「理由? 理由なんて簡単よ。コレ一つさえあれば何でも手に入るのよ? 」

 こうなれば、勿論みなが疑問を抱える。

 コイツ何いってるんだ。と

 そうなるのも、予想の範囲内だったのだろう。用意しておいたのか、かまわず意見を主張する。

 「無人島。無人島に一人だなんて誰が言ったの? 複数人の可能性だってあるのよ。あらゆることを考えて行動するのは常識よ。例え、私一人だったとした所で、何を選んだところで死ぬのは決まりっこ。仮に、複数人いたとすれば、治安の良好化だってはかれるし、ほしいものは脅せば手に入るもの。違う? いいことずくしじゃない。」

 さらに彼女は場と空気をわきまえるということを知らないのか

 「…………教材なんてバッカじゃないの。」

 と呟き着席した。

 こんな常軌を逸した発言。まさにこれこそが醍醐味。自分の偏った思考を、世界観を、色んな人の意見に耳を傾けることで変える事が出来る。


 俺は、ここに惹かれたんだ。この魅力に……。


 多少、失礼な主張をしたものの、驚愕と納得の目を向けるもの。ケンジもその一人だ。

 だが、その彼はまだ所見を述べていない。

 ケンジは思う。……帰り道。・・・・・・だなんて可笑しいよな。

 

 と、このように彼もまた、常識を外れた意見を持っている。そこに、楽しさ、趣があるのだろう。

 果たして、ケンジを引き寄せた魅力というものが、討論部としてのものなのか、それとも彼女、スバルに対してのもの、なのかは 彼しか知らない――。

 

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