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一話

「おーい! 何だっらとしてんだ。先輩たちまっとるぞ!」


 AM7:30 〇×空港内。茶髪の少年。背丈は彼と同じくらい。高くも低くもない。

 彼に大きく手を振り、急げと言わんばかりに、走っては振り向き、走っては振り向く。

 何度繰り返しただろうか。

 透明張りの天井。そこからは、いくつかの淡い雲が姿を現している。

 

「晴れ・・・・・・・だ」

 

 久々の晴れだからだろうか? 否、他の理由だろうか?

 半そで半ズボン、肩には黒のショルダーリュック。

 彼は、満足気に笑みをこぼしている。

 

 「晴れだぞ! 晴れ! 快晴だ! 旅行日和だ。カケル! 」

 

 アッパレと両腕を天高く掲げる彼の前に、カケルとおもぼしき人物が近づく。

 

 「いてぇ! 」

 

 少年は軽くエビ反りになり咳き込む。

 

 どうやら、ボディブローをもらったらしい。

 

 「ケンジ。急がないと先輩も待ってるし、その旅行とやらも行けなくなるかもな」

 「ナッ、ナニィ! 」

 

 これでもか! といわんばかり大げさに、全身を使って反応するケンジ。

 

 「なぁ、カケル。待ち合わせ場所ってどこなんだ? 」

 「確か出発予定表下に集合だったはずだよ」

 

 二人は、壁に掛かった大きなスクリーン、出発予定が刻まされた、その下に、先輩と思しき二人を視界に捕らえた。

 

 「ほら、いくぞケンジ」

 

 おぅ。と頷きを返すと、カケルが駆け出した。

 

 「遅れてすみませーん! 」

 

 大声を発しながら、手を振り走るカケルの後を付いて行くケンジ。

 彼らが近づくにつれて分かる体格差。

頭二つ分ほどばかし、とびぬけている彼が

 

 「全然大丈夫だけど、急ごうか! 」

 

 柔い声に、男にしては女のような顔立ち。彼の隣で待っている彼女にもおとりやしないレベルだ。

 

 「遅い。待ちくたびれた」

 

 彼の態度とは一転。スタイル良し。顔良し、髪は黒いセミロング程の彼女は明らかに不満を表していた。

 待ち合わせに遅れてきた二人は、頭を掻きながら苦笑する。

 そんなグダグダをまとめるように、180cmほどあるだろう大男。かと聞かれれば、そうでもない彼が、注目! といわんばかりに、ポンポンと二回手を叩いた。

 

 「それでは、みなさん揃いましたところで、スピーチ討論部! 全国大会に向けて出発します! 」


          ☆  ☆   ☆



 夏休みも終わりが近づいた滞在最後の夜――

 暗がりの外。細い小道に沿って並ぶ木々。

 何が何だか分からない。音も無く背後から突き刺さった刃に、頭が真っ白に塗りたくられていく。

 何故、何故? 分からない。

 心の声は言葉とならず、言霊にできず、ただただ疑問と空白だけが頭を埋めていく。

 彼の頭の中に走馬灯。今までの思い出が流れていく。それは最新の今にもたどり着く。俺は、俺たちはどこで間違ったんだろうか・・・・・・・。

 そのまま、力なくケンジは倒れた。

 Tシャツを通し、生暖かい血がにじみ出る。刃先から深く血塗られた刃は月明かりに照らされ赤々しく輝いている。

 そこには、血も刃も似合わないような華奢な少女が立ち尽くしていた――


      ☆   ☆    ☆


 

 「ォ・・イ   ォィ・・ オイ! 着いたぞケンジ! 」

 

 元気良く彼がケンジを揺さぶる。

 重々しい瞼を持ち上げ、彼は周囲を見渡す。

 突き抜けた視界。自然・・・・・・? 視界を遮るものが少ない。どこか山奥。

 飛行機に乗り、バスへ乗り換え何時間たったであろうか。

 時すでに11:45

かろやかな足取りでバスを降りるカケルと、空港に来たときとは一転。重い足取りで降りるケンジ。

 

 「何ノロッとしてるのよ! 男でしょ、情けない。」

 

 まぁまぁ。と逆毛立つ猫をおだてるように扱う彼、御堂マモル。

 

 「ケンジ君は、乗り物だめだったけ? 」

 「見ての通りですよ・・・・・・」

 

 そういえば・・・・・・・。と苦笑を浮かべていたカケルが口を開いた。

 

 「行き先は着いてからのお楽しみ! だなんて聞かされてましたけど・・・・・・ココ。どこですか? 」

 

 口をポカンとさせて、ロボット口調で喋る彼。

 花城スバルは、それに真顔で答える。

 

 「さぁ? 知らない」

 「「「エッーーーェーーーー! 」」」

 「「エッェェーーーーーーーー! 」」

 

 スバルの発言に目を丸くして、三人が声を上げる。

 と、また、マモルが自分達と同様に驚いているのに対し、またカケルとケンジが声を上げた。

 

 「ちょっ、御堂さん! コレ、ガチですか? 全てをスバルさんに任せてたんですか?」

 

 カケルの問いかけに、マモルは困った顔をし、ひと間おき、左手を後頭部に、右手を自分の腰にあてると、

 

 「テヘペロッ☆ 」

 

 ケンジは内心思った。

 俺の夏旅行計画は終点を迎えた・・・・・・。と。


 ☆   ☆   ☆


 「ではごゆっくり」

 

 同い年ぐらいで、緑髪の持ち主。ことシノンは部屋に残された食器等を持ち、出て行く。

 

 「えらいね~。僕らと年は変わらないのに、しっかりしてるよ~。」

 

 彼女、新條シノンは家の手伝いという名目で、この宿で働いているらしい。年は十七。何だか、才色兼備という言葉が似合いそうだ。


 それはさておき――

 バスケット部のようなゆらりとした格好のマモルが、三人の前に立っている。どうやら、何かを始めるみたいだ。

 狭いとも、広いともいえない部屋にパジャマ姿の四人。

 一つの咳払いを合図に、彼は語りだした。

 

 「明日は、我が部初の全国大会を迎えることになりました。みなさん・・・・・・・」

 

 と、突如華奢な足で立ち上がり、スバルがここぞとばかりに叫んだ。

 

 「頑張りましょーー! 」

 「おーー! 」

 

 それにつられて、カケルが右手を掲げ、賛成の意を示す。

 え? え? と困った顔を浮かべるマモルと目が合い、カケルは苦笑いをみせ、感情をごまかす。

 そうこうしているうちに、いつのまにか、少しばかし古おびた布団がしかれる。その勢いで、誰かが天井からぶらさがっている、紐をひいた。

 狭い部屋を照らしていた一つの光が消え、カーテンの隙間から鋭い月明かりが差し込んだ――

 結局あれは、スバル先輩の冗談だった。あれから、宿泊先。であるここまで予定通り進み、明日は討論部にとって大切な、思い出になるであろう日を迎える。

 

 ひとつ心残りがあるとすれば、今日は温泉に入れなかったことだろうか。まぁ、また戻ってきた時に入ればいっか――

今回こそ、最後まで書ききりたいと思います。

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