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灰騎士物語  作者: トキバカナリ
第三章 仮面と絵本の御姫様
63/155

かくれんぼ

「もーいいかい」

「まぁーだですよぉ~」


 かくれんぼじゃあるまいし……と鬼役に徹したルダージュは独り()つ。

 オリヴィエとシルヴィエが部屋を出ていくまで目を開けてはいけない、と言い渡された彼は直立不動で待機していた。姉妹の素顔を見ない配慮とはいえ体感としては一分ぐらいの時間が経過していた。


「……もーいいか~い?」

「まぁ~だですよぉ~ってあいたー!?」


 素っ頓狂な声が上がり思わず目を開けてしまう。

 目の前にはスナップをきかせ鞭を素振りする静淑なメイド。そしてお尻を抑えた若いメイドが並んでいた。

 周囲にセルティアたちの姿はない。

 どうやら若いメイドのイタズラだったようだ。


「せんぱ~い……酷いですよぉーちょっとした茶目っ気じゃないですかぁー私も憧れのルダージュ様に出会えて舞い上がってただけなんですってぇー」

「あなたはどうしてそう変な喋り方をしてしまうのですか? 再三、教えましたよね? メイドとはなんたるかをこの短期間でどれだけ――」

「ごめんなさいっス」

「そのような口の利き方を教えた覚えはありません!!」

「ったぁー!?」


 尻を叩かれ若いメイドが飛び跳ねた。

 学習しないのかわざとなのか。推し量る間も無く、鞭メイドがルダージュへと向き直る。


「お見苦しいところをお見せして申し訳ありません」


 丁寧に頭を下げた鞭メイドはドロシーと名乗った。彼女は教育係でありメイド長補佐を勤めていて、最近配属されたメイドたちの目付け役でもあるそうだ。


「そしてこの娘が――」

「はい! 新人メイドのアルメラと申しまぁす! よろしくお願いしまーす!」


 軽薄な挨拶が耳を突き抜ける。

 ドロシーが額に青筋を立てるがアルメラは気にした様子もなくルダージュへと近づく。


「やぁ~本物をこんな間近で見れるなんて私は幸せ者ですよぉ~。あれ、魔装って言うんですか? ルダージュ様の能力。もう一回見せてほしいですよぉ~」

「えっと、それは別に構わないけど――」


 ルダージュは戸惑う。

 天真爛漫を体現したようなアルメラに気圧されているのだ。

 燃えるような赤髪を尻尾のように揺らし、人懐っこい笑みでルダージュに擦り寄るように接近する彼女はまるで子犬のような愛らしさだった。


 そういえば――とルダージュは思い出す。お留守番についてセルティアが熱く語ってた時、アルメラが強く同意するように頷いていたことを。


(セルティアと同類か……とりあえず、魔物の模型でいいかな)


 と、手の平に魔装を集めようとしたところで「お待ちを」とドロシーからストップの声がかかる。


「ルダージュ様。どうぞ、アルメラの言葉は無視してください」

「えぇ!? なんでですか先輩!」


 ぶうたれるアルメラを余所に、ドロシーは言葉を続けた。


「極力、人型精霊と疑われる行為は控えて頂きたいのです。こちらの我がままを強いる形で申し訳ないのですが精霊の力は城内では禁止ということでお願いいたします」

「魔装も駄目なのか……」


 不便ではあるが必要性はない。

 郷に入っては郷に従えとも言う。


「……」


 ルダージュは集まりかけていた魔装の塵を握りつぶすことで応えた。

 隣で「あぁあ!? 勿体無い!」と悲鳴も上がるが無視する。


「ありがとうございます。ルダージュ様」

「戦闘でも起こらない限り問題ないですよ。ちなみに俺が人型精霊だと、誰にバレると……」


 不味いのか? と、ルダージュは質問を投げかけようとしたが、ドロシーの困ったような苦笑いを見て口を閉じる。

 どうやら口外禁止らしい。


「あれ? 言っちゃダメなんですか? 先輩?」

「……城内に発令された箝口令(かんこうれい)の一部よ。当然です」


 しかし、教育不足の新人には行き届いていなかったようで首を傾げてしまっていた。


「本来は話題にするのも禁止であって……アルメラ? まさかとは思うけど他のメイドたちと井戸端会議に花を咲かせる――なんてことはしていませんね?」

「うえぇ? やだなぁ~そんなわけないじゃないですかぁ~。信用してくださいよぉー」

「……」

「……」

「……え? どぉーして黙るんですか先輩。しかもルダージュ様も同じ反応っておかしくないっスか!?」


 声のトーンを落とし、わざとらしく驚愕した表情を見せるアルメラ。

 王家に使えるメイドがこんなに胡散臭くていいのだろうか。

 ドロシーが目頭を押さえ小皺を増やしていることに同情の念を禁じ得ないルダージュであった。


 ±


「楽しんでいただけましたか? ルダージュ様」

「もちろんですよ」

「やぁ~私としてはここよりもっとオススメの場所があったんですけどねぇ~。これじゃあまだまだ楽しめないよぉー」


 城内を一時間ほど散策し、ルダージュたちはバルコニーへとやってきていた。

 ドロシーの問いかけにルダージュは笑顔で頷く。

 仮面で表情が隠れているため声の起伏しか伝わっていないが、ドロシーは満足げに頷きアルメラは相反するようにため息を吐いていた。


「アルメラさんの案内も面白かったよ? つまみ食いをさせてくれるキッチンとか兵舎を覗き見できる屋根の位置とか」


 紹介するたびにドロシーに怒られるアルメラは見物(みもの)だった。場所が移り変わるたびに性懲りもなく変な解説を挟みたがる彼女は、その都度ケツをドロシーに差し出していた。


「でもでもぉ~とっておきの場所がこっちにぃ……」


 納得がいかないのか諦めが悪いのかルダージュの腕を掴むが――


「いい加減にしなさい。ルダージュ様も歩き詰めでお疲れのはずです」


 ドロシーに叱れ、アルメラは叩かれまいとお尻を抑えた。


「……まったく、もう叩きませんよ。振り回しているこちらの腕が持ちませんから。儀式もまだ時間がかかるようですのでここで休憩にしましょう」


 お茶の準備をしてきますと言い残し、ドロシーが部屋を後にする。

 ルダージュとアルメラが2人っきりになってしまったが別段、居心地の悪さを感じることはない。


「……」

「……」


 散策でそれなりに打ち解けていた2人が顔を見合わせる。


「ばっくれちゃいましょうぜぃ、だんなぁ」

「三下のコソ泥みたいなセリフだな」

「言い得て妙なツッコミ!」


 あしらい方も板に付いてきた。

 アルメラとは見た目的に年齢が近いせいか、ルダージュにとって気安く話ができる相手になっていた。おそらく彼女の明け透けな性格に会話が引っ張られているのだろう。


 もし失礼なだけで教養もないメイドだったらドロシーも客人(ルダージュ)と2人っきりにはさせない。そういった意味ではアルメラは信頼されていると言っても過言ではないのだろう。


「綺麗な街だな」


 市街を展望できるその場所は大臣が薦めるだけあって美しい景色だった。魔法が発達しているためか電化製品などが一切存在しないこの異世界。つまり、電柱などの景観を損なう余計なものが街にはなかった。そういった要因が街を美しく見せているのだろう、とルダージュは物思いに耽る。


「うわぁーこれはアレですねぇー私のエスコートはいらないって感じですねぇー……夕暮れ時が風情もあっていいですよぉ?」

「そうなのか?」


 時刻は昼に差し掛かるところだ。夕日を拝むにはまだまだ時間があった。


「第二王子に教えていただきましたぁ~」

「仲がよさそうだな」

「むふふ~とっても可愛らしいんですよぉ~思わず手ご――なんでもありません口が滑りましたぁ~」

「おいおい……」


 大方、手込めにしたいとかそんなとこだろう。呆れたルダージュは半眼でアルメラを見つめる。


「一介のメイドの言動とは思えないな。ちなみにその王子様は何歳なんだ?」

「え? 十歳になられたところですねぇ……ってなんですかぁ、その『こいつが近くにいたら悪影響を及ぼしそうだな』って眼差し」

「気のせいだろ」

「えぇー……」


 誤魔化すように視線を逸らしたルダージュは、ふと視界の端――下の階のベランダでもぞもぞと動く小さな影を捉えた。フードで顔を隠し、小柄な体にローブを纏う。おそらく十歳ばかりの子どもだろう。


「なあ、アルメラさん。もしかしてあの子がその王子様ってわけないよね?」

「はい? 第二王子は今頃お勉強のお時間ですよぉ? いったい何を言って――」


 ててて、とアルメラは小走りで手すりに近寄り、ルダージュと同様に城を見下ろすと言葉を詰まらせた。

 心なしか血の気が引いていき顔色が悪くなったように思える。


「えーっとアレは別人ですね。おそらくご友人ではないかと」

「王子様にあんな怪しい友人がいていいのか?」

「それを言ったらあんな怪しい人物が王子なわけないじゃないですかぁ」

「正論だな……ん? 何してんだあれ……まさかベランダから下りるつもりか」


 様子を見守っているとその子どもは(ロープ)を手すりに結び付け、豪快に地面に投げ落としていた。そして手慣れたようにするすると昇降(しょうこう)していく。


「不審人物を放置していいのか? さっきの話の続きじゃないが本物のコソ泥みたいな動きだぞ?」

「ルダージュ様ぁ~お城の防犯、警備を舐めてはいけませんよぉ。外からの侵入なんて不可能! 難攻不落の城塞都市の名は伊達(だて)ではないのですぅ!」

「じゃああの子は何者なんだ?」

「……」


 黙るなよ。

 しかし、ルダージュも人のことは言えない。子どもの正体を探ったところで何ができるわけでもなく、顔が見えたところで王子を判別できるわけでもないからだ。

 荷物や袋などは見受けられず盗みを働いたようにも見えないので、ただ眺めることしかできなかった。


「――」


 子どもが地面に降り立つと、今度は先程までいたベランダに向かって何事かを叫び始めた。

 声で少年。泥棒というにはお粗末な大声で彼がコソ泥ではないと確信する。


「……正直、見なかったことにしたいです」


 隣でメイドの本音が漏れたが聞かなかったことにするのは優しさだろうか。

 ルダージュとアルメラが見つめる先にはもう1人、少年よりさらに小柄な子どもがベランダから頭を出していた。少年と同じようにフードで顔を隠しているため声を聞かない限り性別はわからないが、年齢が上ということはなさそうだ。


 大事そうに本を抱えているせいで両手が塞がっている。しかし、少年を後を追うつもりなのかたどたどしい挙動で(ロープ)に手を掛けた。


「まさかあの状態で降りる気じゃないだろうな……!」


 危なっかしくて見ていられない、とルダージュはバルコニーから身を乗り出し、飛び降りる準備を始める。緊急事態のため魔装の使用も視野に入れ、視認できるレベルまで灰の霧を発生させる。

 少年たちを言葉で止める選択肢はない。もし大声で制止して驚かれたりでもしたら本末転倒だからだ。


「ちょちょちょっ!? なぁにしてるんですかルダージュ様! 危ないですよ! ここが何階だと思ってるんですか!! 飛行魔法使えませんよね!?」

「問題ない。それに俺には巫女の加護もあるからな」


 仮面をコンコンと叩きアピールする。

 姉妹が貸し与えた仮面自体に特別な能力はない。ただルダージュには剣聖の儀の影響により土と風の身体強化魔法が常時付与されている。聖刀剣を握った勇者状態と比べたらはるかに劣る簡易的な力だが、ルダージュの意識に反応して呼応する使い勝手のいい能力だ。


「そういう問題じゃ――あぁ! ……行っちゃいました。まずい……これはまずいですよぉ。流れによっては私が叱られてしまうじゃないですかぁ」


 落下したルダージュとフードの子どもたちを見比べ人知れずぼやくアルメラ。

 そんな頭を抱えた彼女の想いなどいざ知らず、ルダージュは持ち前の身体能力と魔装を足場にして地面へと降り立っていた。


「杞憂だったか……?」


 ベランダを見上げるとフードの子どもが丁度手すりに足をかけているところだった。

 元の世界だったら動転してもおかしくない光景だが、この異世界(アリアストラ)であれば珍しくはない。魔法で空を飛べる者もいればルダージュのように自力で落ちることも可能だ。もちろんそういった人種は(ロープ)を使って降りようとは考えないだろう。


「っ!?」


 事態は急転直下する。

 ルダージュの前言を取り消すかのように足を踏み外した子どもがその拍子に本を落としてしまう。それならまだよかったのだが、その子は余程その本が大事だったのか手を伸ばし逆に(ロープ)を離してしまったのだ。


「バ、バカもの! なにをしている!」


 少年の声が響く。

 ごもっともだ。ルダージュは頷きながら疾走する。

 取り乱す少年を追い抜き大地を踏みつけ跳躍。空から落ちてきた子どもをキャッチすると「わっ」と驚いたように口を開いた。


「静かに、舌を噛むぞ」


 空中にいるため端的で短い言葉を選んだ。

 魔装を使わずに助けることができたためそのまま壁を蹴り、適当に落下する。


「無事に到着っと。怪我はなかったかい?」


 軽い足取りで着地し、抱っこしていた少女(・・)を地面へと降ろす。少年との身長差や体格に声。2人目のローブの子どもが女の子であることは抱きしめた瞬間にルダージュは察していた。

 しかも彼女は獣人だった。

 フードは獣耳の部分が盛り上がり、足元からは銀色の尻尾が見え隠れしていた。


(それにこの子が持ってる本……いや絵本は――)


「あ、あの、ありがとうございました。えっと、巫女、さま……?」

「巫女? あ……! いや、これは――」


 唐突に飛び出た単語に困惑するが、ルダージュは自分の仮面を思い出す。事情を知らない人間から見れば仮面の形でオリヴィエとシルヴィエの連想するだろう。

 どう言い訳したものかと頭を悩ませていると少年がルダージュと少女の間に割って入ってきた。


「学生よ! よくやってくれた! 貴公の働きに褒賞を与えたいところだが、余たちは鬼から逃げているところなのだ!」

「鬼?」

「ああ、とても恐ろしい鬼だ! だからすまない!」


 少年が少女の手を取り駆け出した。身を忍んで逃げる後ろ姿はまるで逃避行だ。


「おいかけっこ……もしくは王子様が気になる女の子を連れ出してデート……とかかな? う~ん、微笑ましい。こんな危ない逃げ方をしなければ、だけど」


 2人を見送ったルダージュはベランダを見上げる。獣人であっても怪我は避けられない高さだ。


「ん? あれは……」


 人影が見えたので城から離れ視線の角度を調整すると、1人のメイドと目が合った。

 メイドは仮面の学生(ルダージュ)に気が付くと切羽詰ったように手すりに身を乗り出した。


「そこの男! ここで子どもを見なかったか!?」

「見ましたよー」

「どこへ行った!?」


 あっち、とルダージュは方角を指さす。

 王都の地理に詳しくはないため場所の名前まではわからなかった。


「城下街の方角ではないか! 逃げ出したと思ったらまた従者も連れずに……!」


 プルプル震えだし今にも角が生えそうな雰囲気だ。どうやら鬼とは彼女のことらしい。

 しかもよくよく見るとこのメイド、ルダージュにとって見覚えのある顔だった。


「あのーラクスさーん。俺があの子たちを連れ戻してきましょうか?」

「いいや、それには及ばない。どこの誰とも知れない男に任せるなど……まて、貴様! 何者だ!?」


 今頃かよ。

 余程少年たちのことが心配だったのか、ここにきてやっとルダージュの様相にツッコミが入る。城内を案内されていたときはドロシーとアルメラが両脇に控えていたので問題は起こらなかったが、ルダージュ単体で見れば顔を隠した怪しい男に他ならない。当然の反応ともいえる。


「学園生がこんなところで練習か?」

「練習?」


 なんの?

 仮面をつけることが何の練習に繋がるのかルダージュにはピンと来なかったため思わずおうむ返しに答えてしまう。しかし、メイドの女――ラクスは彼の態度に気にした様子もなく自力で答えを導こうとしていた。


「いや待て、声に聞き覚えがある。それにその黒髪……もしやルダージュ殿……か?」

「お久しぶりです」

「うーわ」


 心底迷惑そうな顔を隠そうともしないラクス・フォン・ファバレー。

 彼女との再会は幻魔討伐作戦以来だ。出会ったときは神話の戦乙女(ヴァルキリー)のような装いだったため気付くのが遅れてしまった。


 デュカリオン大森林から王都までの道中、世間話を交した程度の仲だが、両者は互いに座視できないほどの重要人物だ。

 ルダージュにとってラクスは宮廷魔法使――つまり、将来セルティアの上司に当たる人間であり、隊長を勤めるほどの優秀な人材だ。今のうちに良好な関係を築きたいと考えるのは自然の理である。


「せっかく再会したのにご挨拶じゃないですか」

「……失礼ながら私たち(・・・)()一番遭遇したくない相手が貴様だ」

「俺、何かしましたっけ!?」


 容赦のない拒絶の言葉に胸を押さえる。仮面を被っていてよかったと思えるほどだ。


「なぜよりにもよって今日なのですか……王子。いつもならお利口さんにお勉強を……」

「聞こえてねえ……」


 とりあえず、嫌われているわけではない――ということにして気持ちを切り替える。冷たい態度も訳があるんだと言い聞かせ目的を果たす。


「じゃ、俺が子どもたちを連れ戻してきますね」

「ん? ああ、くれぐれも頼むぞ――って、待て!! どうしてそうなる!?」

「いやー見送った立場として責任感じてて」


 嘘だ。

 セルティアの将来の先輩にルダージュは恩を売っておきたいだけである。理由もでまかせでしかない。


「待て、待ってくれ! ルダージュ殿の手を煩わせるつもりはない!」

「遠慮しなくていいですよ。どうせ儀式もまだかかりそうだし、個人的に街も散歩したかったんですよ」

「本音はそれか! いいから客人は大人しく座っていろ! おい! 聞いているのかルダージュ殿!! 私が追いかけると言っている!」


 子どもたちを追いかけようと背中を向けるが、強く引き止められた。

 だが、そこまで言うなら、とルダージュは先程から疑問に思っていたことを口にする。


「じゃあさっさと俺を追い抜いて捜しに行けばいいのでは?」

「うっ……」

「もしかしてそこから降りられないんですか? だったら俺が下で受け止めて――」

「そんな破廉恥なことできるわけないだろ!?」


 両手を広げて準備万端だとアピールしたが振られてしまった。


(もしかしなくとも、俺、嫌われてない?)


 ラクスに毛嫌いされているのではないかとだんだん悩み始めたルダージュだったが、笑顔を張り付けることは止めなかった。

 営業スマイルのようなものだ。


「……私はこれから自分の鎧を連れてこなければならない。すぐに追うことはできん」

「?」


 妙な表現を聞き首を傾げる。

 メイド服を見下ろし肩を落としたラクス。言い間違えたようには見えない。

 とりあえず、


「なおさら都合がいいじゃないですか。俺が先に見つけて子守しておきますよ。発見したらわかりやすい合図だしますから後で合流しましょう」


 さすがにこれ以上は言い合いは不毛だとルダージュは返事も待たずにその場から走り去る。

 強制的に鬼のバトンを奪い取った仮面男によるかくれんぼ第二ラウンドの始まりだった。

 

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