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Called end of True  作者: 野崎リント
少し長めのプロローグになりますの
6/9

楓事情がありまして

中学生、という立場が嫌だった。


どうしてなんだろう。

目上の人間に同年代以下なんだという認識をされたくない。

そんな変な意地が、施設に来てから私の中に存在していた。

年上の相手に、年下として扱われたくない。



その思いは施設を出た今でもあったりする。

そういう思いは日に日に強くなり、現在私は高校一年生だけれど、高校生という立場さえどこか歯痒いものだと思ってしまう。


「ニンジンが嫌いだ」という一言を発し、周りから「それは子供らしいね」と笑われ、この思いが明確になった学校に通えるという施設の事務所内での出来事。


何故なんだろう。何故年下として見られるのがこんなにも屈辱的に感じてしまうんだろう。恥ずかしいと思うんだろうと、自問自答を何度も繰り返した結果。

思い当ることが一つだけ出てきた。


それは、10年以上前からずっと一緒にいた幼馴染達の存在だ。


皆それぞれ個性が強く、年齢も私の三歳下から七歳上までと幅広い層。

中でも一番古くからの付き合いであるチアキ双子などは歳不相応な全然子どもらしくない物腰のせいで、同年代なんだという意識をつい忘れる。

私より年上の連中は、皆私を対等の存在として見てくれていた。

相手同士の歳なんてどうでもよくなる、そんな扱いをしてくれた。

だからなのだろうか。

年上の人たちに、年下として見てもらいたくないという思いが芽生えたのは。


施設に入って皆との空間が恋しいあまり、あの心地のいい空間を他の場所でも求めるようになってしまっているのだろうか。

これは悪い事なんだろうか。よく分からない。

そりゃ、相手にそういう自分の意思を押しつけたりなんかしたら悪い事なんだろうけど。

こう思ってしまうのも、おかしなことなんだろうか。

皆ならどう思うんだろう。


アキにそんなことを聞いたら馬鹿じゃないのかと鼻で笑われて終わるだろうか。

彼らは今、私のいないメンバーで何をしているんだろう。

何を考えているんだろう。私の事を心配しているだろうか。

それとも私のことを考える暇がないくらい、自分たちの充実した日々を送っているだろうか。

今私は、あの隔離施設の外に居るけれど、もしかしたら帰りに鉢合わせ出来るなんてことはないだろうか。……ないか。


事務所の人たちとの会話が済むと、私と妹はもしこの施設に入るとしたら使うことになるだろうという部屋を見せてもらった。

二人部屋でベッドと机と、他にも棚やタンスといった家具が二人分あった。


その部屋を見て、私はすぐに嫌だなと思った。


この空間では生活したくない。

妹の楓から、離れたい。そう思った。


楓は昔、楓が小学一年生の時に起こったとある出来事からずっと、何かしらあれば「お姉ちゃんがそうするなら」というような行動するようになってしまっていた。

それは、楓が自分自身で自分の大切な人生の選択を一人で出来なくなってしまっているということを表す。

私は、楓の人生も一緒に背負っているような、そんな状況だった。

小学四年生の頃から、私はずっと二人分の人生を背負って生きていた。

何かしら行動を起こすにも、楓の事も考えて動くのが当たり前になっていた。


そんな生活は、想像以上に私にとって重いモノだった。

施設生活が始まってからは、余計にそう感じるようになっていった。

楓に、姉離れをしてほしい。

私は親ではない。

自分の事でも精一杯なのにこの上楓の分まで、というのは不器用で小心者な私にとってあまりに酷な事だった。


施設で楓は、超がつくほどの問題児だった。

元から周りを見ない性格が施設での団体生活ではとんでもない軋轢を生んでいて、施設に居る子ども達や指導員は何かとあると楓の悪口や問題行動を私に愚痴った。

中学生以上の男の子は特にそういったことが多く、半ば喧嘩腰で「おまえの妹なんとかしろ!」と怒鳴りつけられることも少なくなかった。

そのたびに私は頼むからそういう事は本人に言ってくれと返していたが、そのたび相手は「本人に言ったって聞かないし直さない」と憤慨するのであった。


指導員は楓にはいくらペナルティーを与えてもなんの効果もないということで、何故か私に楓の分のペナルティーを与えてきた。

反省文や漢字の永遠書き取りも全部私がやらされ、その分自分の勉強時間が減ってしまい、その日の課題のノルマを達成できないこともあった。


楓を、呪った。


いい加減に嫌だった。

私がペナルティーを受けている間、楓は私がそんなことをしていることすら知らず、休み時間にはゲームや漫画。

なんの嫌がらせだと、楓を問い詰めたこともあったけれど、楓にはなんの自覚もなかった。


学校に通える施設の下見が終わり、私と楓はケースワーカーの車で隔離施設へと戻った。


楓との関係を今以上に最悪だと思うことになるのは、この数時間後に起こった。

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