堪忍袋の緒が切れる
(豪紫・摩那・朝比奈)
「きゃきゃきゃきゃ!苦しめ!もっと苦しめよ!もっともっと苦しめ!」
雷は、摩那の首を締め上げ、苦しむ姿を見て狂ったように笑い出した。
「摩那!」
「豪紫様・・・私・・・」
「もういい!戻って来い!」
そんな豪紫をあざ笑うかのように、雷は次の言葉を放った・・・
「だ~め!!もっと苦しむ顔見たいから!」
豪紫は切れそうな心をなんとか抑えていた。
「だって、久しぶりだよ!たくさんいじめまくって、こんなに苦しむ顔が見れたんだからさ~。だめだよ~きゃ~きゃきゃきゃ~!!」
「てめぇ・・・」
豪紫の右腕が、黒紫色の霧に包まれていく・・・
次の瞬間、豪紫の右手に大きな弓が握られていて、それが右腕と鎖で繋がっていた。
「ひゃひゃひゃ・・・面白そうな物持ってんな!かかってこいよ!」
雷は、右手の中指を上に向け、挑発するかのように手招きをする。
それを見て、豪紫の堪忍袋の緒が切れた。
「ぶっ殺してやる!」
右手の弓に紫色の矢が現れると、豪紫はそれを雷に向け放つ。
立て続けに・・・
「打て打て!どんどん、どんどん!」
雷はそう言いながら摩那を離すと、森の木から木へとぴょんぴょんと飛び移り、矢をかわしていく。
朝比奈は、落下して摩那をキャッチするとすぐに結界を張る。
「豪紫・・・様の・・・そばに・・・」
「だめだ!この身体じゃ戦えない。ここでいろ。」
「嫌・・・です・・・ここで私がこのように・・・休んでいては、武具として・・・示しがたたないのです・・・だから・・・」
「お前のために戦ってる豪紫の気持ちはどうなんだよ!少しは分かってやれよ!」
朝比奈は思わず叫んでしまった。
摩那は、はっと我に返り言葉を出すのをやめた。
「い・・・今はここで豪紫を見てろ。分かったか?」
そういいながら、摩那の目をじっと見て静かに微笑んだ。
「万が一やばくなったら俺が動く。摩那は豪紫を頼むぞ。」
「了解しました。豪紫様は我が主。お守りするのが私の使命ですので。」
そういって、真剣な目で朝比奈を見つめていた。
「ひゃ~ひゃっ!もう終わりかよ!」
雷は、豪紫を挑発するかのように高らかに笑いながらそういった。
しかし、豪紫は再び矢を放とうとはしなかった。
「は?どうしたんだよ、死神さん?もう終わり?」
「終わったのは、お前だよ、雷!」
豪紫は、無駄に矢を打っているのではなかった。
雷の動きには癖があり、対象物(この場合は豪紫)の周辺100Mぐらいの範囲を無作為に逃げている。それ気づいた豪紫は、雷の動きに合わせて結界を張っていたのだ。
「はぁ?俺が終わり?ふざけんな!」
雷は、キレ気味で豪紫にくって掛かっていたが、次の瞬間それが現実になった。
雷の両手足が急に動かなくなり、動きを止めていく。
「どうだ?雷。俺の張った蜘蛛の巣は。」
「どう・・・いうこと・・・だよ・・・俺は・・・攻撃を受けて・・・ないのに・・・」
「お前が俺の結界を踏んでいったからさ。俺の結界は木に刺さった矢と矢の間で結界を繋げていく。だから、複雑な結界が出来るんだ。お前には残念だけど。」
豪紫は、自慢げにそういった。
「こんなもん・・・」
そういうと、雷は自らの腕に噛み付き、引きちぎろうとしていた。
豪紫はそれを止めるために首に思いっきりチョップをし、無理やり腕と口を引き離した。
「やめろ!」
雷はなおももがき続ける。怪我しようが血を噴出そうがかまわず・・・
(こいつ・・・痛みとか感じてねぇんじゃ・・・)
「とにかく!お前を今から封印する!」
そういうと、豪紫は間髪いれずに雷を封印した。
「豪紫様・・・」
そこには、傷だらけの摩那が申し訳なさそうに立っていた。
「摩那!こんなに怪我してじゃないか!大丈夫か?」
豪紫は、摩那の身体を見るなり、今までの心配事を畳み掛けるように口にしていく。
「豪紫様・・・申し訳・・・ございません。私・・・武具としての役目を・・・」
「十分果たしてるよ。」
豪紫はそっと摩那を抱きしめる。
「だから、気にすんな。」
「はいはい、そこまでにしてくんねぇ?うざい。」
「そんなこというなよ!尊!」
「はいはいど~も。とにかくここから出るぞ!」




