決意と願い
(翡翠黒鬼 離れ)
「やっぱここにいた。」
豪紫は、縁側で煙草を吸う護憲の横に座ってそう言った。
「俺の家だ。いたら悪いのかよ・・・。」
「悪くはないけどさ・・・右手大丈夫か?えぐい事になってるぞ・・・。」
「気にすんな。大したことねぇよ。」
この少しの会話の後、少しの沈黙が彼らを包んでいく・・・。
「山王隊長・・・」
「小僧院君。龍崎隊長は大丈夫なようですね。」
「え?」
「ここは、僕たちより兵頭さんに任せたほうがいいのかもしれないです。先に正門に向かいましょう。」
弼は疑問に思いながらも山王と一緒に正門へ向かった。
龍崎と豪紫の間には、小さなグラスが2つ置かれていた
摩那がそのグラスに透明な酒を注いでいく・・・
「豪紫・・・」
「もうみんな行ったよ。後は俺とお前だけ。」
「そうか・・・」
彼らは、グラスを手に取ると、互いの腕を組み、酒を一気に飲み干した。
「行くぞ。護憲。」
「おう。」
「摩那。みんなどの辺りにいる?」
摩那はそういうと、そこに小さな木の箱を取り出し、横についていたレバーを引っ張った。すると木の箱の中にレーダーのようなものが映し出された。
「はい、ここから北の方向にある闇森の中ですが、一馬様だけ屋敷にいらっしゃいます。」
「え~!!何やってんだ、あいつ?」
「わかりません。しかし、一馬様のことですので何か意図があって・・・」
「おい・・・聞きたいことがあるんだけど・・・。」
「何?」
「どうしてこんなに正確に居場所が特定できるわけ?」
「うん?昨日みんなで食べた饅頭、あれ摩那特製の追跡装置入り饅頭なんだ。だから居場所特定可能。」
「ふ~ん・・・って昨日の昼に持ってきたあれか?」
「そう。おいしかったでしょ?あ、俺たちはここ。」
「お前な・・・」
「じゃ、先に・・・」
(屋敷)
一馬は、眠っている子どもたちのそばを離れることはなかった。
その時に、玄関から足跡が聞こえてくる。
一馬は、息を潜め、子どもたちを抱きしめる。
「一馬・・・。」
そこにいたのは、豪紫と龍崎だった。
「兄さん・・・どうしてここに・・・」
「お前こそ何やってんだよ・・・。」
兄弟のやり取りをよそに、龍崎が視線を変えると一馬のコートが少し動いていることに気づく。
「一馬。そこに誰かいるのか?」
龍崎の問いかけに、一馬は少し動揺しながらも口をあける。
「3番目の事件の生存者です。」
一馬は、コートの少し動かした。そこには子どもたちのやさしい寝顔があった。
「男女各1名。かなりの衰弱が見られます。僕は、この子達の保護に徹するように不動隊長と朝比奈隊長から指示を受けました。」
龍崎と豪紫は、自分たちを見つめる一馬の目がいつもと違うことに驚きを隠せなかった。
そこにいた一馬は、まるで子どもを必死に守ろうとしている父親のような目をしていたからである。
「一馬、その子たちをお前に任した。俺の二の舞にさせたら許さねぇからな。」
龍崎は少し笑いながら、一馬の頭をぐしゃぐしゃにした。
「俺の二の舞・・・どういうことですか?」
「それは、この任務が終わったらそこの馬鹿兄貴から聞け。行くか。」
「馬鹿はねぇだろ(怒)あ、一馬。」
「何?」
「ここに入るときに結界補強しといてやったぞ。あの結界の張り方じゃ、あいつらを防御するのは難しいぞ。じゃ、行ってくるわ。」
そういうと、豪紫たちはその場所から姿を消した。




