電話と通信機
(第4部隊 隊長室)
「兵頭君。今回のケースでも生存者っていると思う?」
霧乃宮は、資料に眼を通しながら兵頭に問いかける。
「皆無だと思います。前回発生よりかなりの時間が経過しているので・・・」
言いにくそうな口調で、一馬はそう答えた。
(第4部隊 製造室)
「弼すげーな。こんなのも作れんの?」
「一応ここの隊員なんで・・・」
司と弼は、武器や薬品の製造についてお互いの意見を主張しあっていた。
(第5部隊 司法解剖室)
そこには、あの子ども達の亡骸が並べられていた。
バラバラになった体の一部を豪紫と摩那はパーツごとに並べていく・・・。
「豪紫さん。今から何を?」
獅織は作業中の豪紫に質問した。
「小僧院が来てからになるんだけど、この子達の身体を元に戻す。バラバラのままじゃこの子達も可愛そうだろ。それにしても・・・司の奴遅せーよ。」
そんな時、部屋の電話が部屋に響き始める。
「へ~い。兵頭です。もしもし?」
「朝比奈だよ!龍崎の意識が戻ったぞ!早く来いよ!」
「そうか!すぐ行く。」
そういって受話器を置いた。
「獅織!護憲の意識が戻った。司達を連れてすぐに龍崎のとこ来いよ!」
そういうと、摩那と一緒に部屋を後にした。
「とりあえず・・・」
そういいながら、獅織は通信機を使い司と一馬に連絡を入れた。
内容
豪紫さんから伝言
龍崎さんの意識回復!全員集合してから集中治療室にこい。
との事。
僕は司法解剖室にいます。ここで待ってるので来てください。
(第4部隊 作業室)
「あ・・・獅織さんからだ・・・」
司はそういいながら内容を確認。弼にもその内容を伝える。
「弼!龍崎さん意識回復したって!」
「マジで!」
「獅織さんが、解剖室にいるらしいんだけど、そこでみんなで集まってから集中治療室に来いって。」
「何で解剖室?」
「わからん。でも、これ豪紫さんからの伝言らしい・・・。」
「とにかく行こうぜ!」
「ほ~い。」
司と弼は話をしながらゆっくりとした足取りで集合場所に向かっていく・・・。
(第4部隊 隊長室)
霧乃宮は電話で朝比奈と深刻な顔をしながら話をしている・・・。
「兵頭君。龍崎隊長が意識回復したって!」
「僕も今、獅織さんから連絡ありました・・・。」
「集合とか書いてる?」
「はい。解剖室に集合してそこから部屋に行くらしいです。」
「何でこんなときにそこなんだろ・・・。行きましょう!」
「はい!」
霧乃宮と一馬はそそくさと部屋を出て集合場所に向かって歩き始める・・・。
(第5部隊 司法解剖室)
「俺この部屋入るの怖いな・・・」
司は少しおびえていた。
「どうしてだよ?」
弼は不思議そうに司の顔を覗き込みながらそう問いかけた。
「だってさ・・・冷たそうだし、雰囲気怖いし・・・」
「は?・・・お前“解剖”とか“治療”の授業受けてるよな?」
「一応。」
「それだったら慣れてるだろ・・・普通。」
ここから数秒間、司と弼の押し問答のような状態が続いていく・・・
「それでも、慣れねぇの!俺は!」
「とにかく入るぞ!失礼します!」
そういって、弼は解剖室のドアを開けた・・・
「・・・。」
獅織は静かに彼らを迎える。
そこには、弼と少し引きつった顔をしている司がいた。
「遅かったね、司(怒)」
その時の獅織の顔は、胸のうちを隠し切れなかったのか笑っているようで、目は笑っていなかった・・・。
「ご・・・ごめんなさい・・・(泣)」
「許さん。とりあえず一発殴らせろ(怒)」
そういうと、みぞおちに思いっきり拳をねじ込んだ・・・。
司は、その場に痙攣を起こしながらうずくまる。
その横で、弼は並べられた腕を見てこうつぶやいた。
「俺のところに司が来た理由はこれか・・・。」
そういうと、腕の傷口を静かに眺めだした。
そんな異質の空間に霧乃宮と一馬が到着した。
「やっと、全員集合しましたね。行きましょうか。」




